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雄ノ山峠
【おのやまとうげ】


和歌山市湯屋谷から和泉山脈を滝畑に越える峠。標高181m。南側は急な断層崖,北側は傾動地塊の緩斜面をなし,和泉山脈における紀和の峠越えのなかでも古代からの重要な交通路であった。峠道は平安期の熊野街道で,江戸期には上方街道の官道であった。「雄ノ」はこの付近の枕詞で,男ノ水門・男ノ里などがある。「日本後紀」延暦23年冬10月壬子天皇桓武に「甲寅自雄山道還日根行宮」と初見され,永承3年藤原頼通の「高野参詣記」には「唹山(おのやま)」,藤原定家の「明月記」には「凌雨超ヲノ山」と熊野街道のコースであった。「紀伊国風土記逸文」にある「たつか弓」とは「紀伊国雄ノ山が関守が持つ弓」とあり,「名所図会」の「紀ノ関跡」また「白鳥ノ関」ともいい,西方の背美山古墳から手束の埴輪が出土した。当峠の南,山口地区付近は古代南海道と交差し,萩原駅が推定されている。平安期の熊野街道は京から王子社を経て峠南の湯屋谷の中山王子から紀ノ川を渡河する。近世の上方街道は大和街道とともに城下和歌山から八軒茶屋―川辺―山口本陣から峠を越え山中宿に達した。昭和5年11月国道29号,大正8年16号に改称され,のち昭和54年孝子(きようし)峠越えを国道とし,地方道となる。峠下に昭和49年阪和トンネルが開通した。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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