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孝子峠
【きょうしとうげ】


和歌山市と大阪府泉南郡岬町との県境をなす和泉山脈分水嶺にまたがる峠。標高106m。和泉山脈では最も広い鞍部を持つこの峠には現在国道26号が通り,峠下をトンネルで南海電鉄が通過している。西日本や大阪湾沿岸の都市と和歌山を結ぶ自動車交通の要衝となっている。神亀元年の聖武天皇,天平神護元年の称徳天皇の和歌浦還幸の際和泉へ至ったルートと考えられ,永承3年の藤原頼通和歌浦遊覧の帰途笠道山を通ったとあるが,孝子峠がそれに当たり,もとは笠木越え,または笠道と称した(続風土記)。このルートの通過する谷を三笠谷といい,今も三笠池が残る。峠道は,近世には孝子越え街道と呼ばれ紀泉を結ぶ本街道をなし,明治31年県道に編入,昭和5年には雄ノ山峠を通過していた国道が廃されて新たに孝子越えの国道16号(昭和27年にルート番号を26号に変更)が建設された。峠名は2説あり,1つは平安期の三筆の1人橘逸勢の娘が,非業の死を遂げた父の墓をこの地に作って菩提を生涯弔い続けたという説,他方は,役小角が伊豆に流罪になり,それを悲しんだ母親に夜々夜行術を使って会いに来,恩赦を受けた後も母の死まで孝養を尽くしたという説である。峠付近には飯盛山をはじめ修験道ゆかりの遺跡が多く,葛城修験最古の資料とされる「諸山縁起」には孝子岳,孝子の多輪とあり,「葛嶺雑記」には岬町上孝子にあった高仙寺に役小角作と伝わる十一面観音,小角の母公の墓があるとしている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7171311