100辞書・辞典一括検索

JLogos

10

小森谷
【こもりたに】


日高郡龍神村にある渓谷。県下最高の護摩壇山と白馬山脈との間の奥まった深い谷あいを源とし,城ケ森山東側に発する枝谷を合わせて南下する日高川の源流部分をいう。旧竜神街道が西の稜線を通り,東の六里ケ嶺には,古来高野山と熊野三山や竜神温泉を結ぶ山岳修験の山道がある。この間を清流が深い谷間を刻む。沢登りには難所が多く,長い間秘境として,訪れる人の少ない地域であった。第26回和歌山国体を機にハイキングコースとして整備されたが,再び荒れて危険となり,一般向きのコースとはいえない。護摩壇山と小森谷口から林道が開設されつつあり,山の中腹から頂上部にかけては人工林へと変わっている。なお,一帯には平家落人伝説が多く,渓谷中の滝白壺・赤壺は,平維盛の死後,その愛人お万が悲嘆に明け暮れたあげく,白粉や紅を捨てたことから命名されたという。ここから北1kmにお万が身を投げたというお万が淵があり,その北約1kmの大字龍神字亀谷は維盛の御屋敷址といわれ,維盛がお万と隠れ住んだ所と伝える。御屋敷址から北へ2km行くと左右に並んだ衛門の滝・嘉門の滝がある。維盛の侍士,衛門・嘉門が平家再興の望みなきを悲しんで投身した所という(紀州の伝説)。衛門・嘉門の両滝は当谷の源流部,杉谷と大師谷の合流する所にあり,少し下ると越戒の滝がある。近くに護摩壇山の登山者が下山する古くからの急な坂道があったが,林道開設に伴い道筋は明瞭でなくなった。アメノウオ等の渓流魚の生息がみられるほか,県内でただ1か所のイワナ(キリクチ)生息地である可能性が認められる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7171628