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田辺湾
【たなべわん】


広義には田辺市付近の海域を指すが,狭義では田辺市元町天神崎から西牟婁(にしむろ)郡白浜町の番所崎の海域を指す。新生代第三紀の丘陵地の浸食谷が溺れたリアス式海岸の形態をとり,会津川が注ぐ河口一帯には扇ケ浜等の砂浜海岸がある。最近の研究では田辺市街地の乗る田辺平野は田辺湾の潟湖が縄文後期から堆積した結果だという。また東部から南部にかけては複雑な荒磯海岸で,島や半島部に海食台が発達し,湾内には神島(かしま)・畠島・神楽島等の島が浮かぶ。湾内は波静かで,かつては真珠,最近はハマチ養殖が盛ん。また江川・文里(もり)・綱不知(つなしらず)(坂田)港などをもち,漁港や木材港・商港として発展した。風光明媚な湾内も近年埋立てが盛んで,文里港沿岸に立地する木材工場の木材団地として神子浜(みこのはま)に11万7,000m(^2)もの埋立てをみたが,オイルショック後の不況で目的は遂行されていない。なお古代からの海上交通の要衝で「万葉集」の室の江に比定され,崎ノ湯への渡航地でもあった。また源平合戦に参戦したという別当湛増の熊野水軍出陣の地としても知られる等,港としての価値も高い。また湾内に魚種も多く,江戸期にはカツオ・マグロ・キハダをはじめ鯨も獲れた。元和9年や享保12年には300頭も捕獲されたという。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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