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玉の浦
【たまのうら】


東牟婁(ひがしむろ)郡那智勝浦町の粉白(このしろ)から浦神にいたる海岸をいう。内海に面しておだやかな風景でしられる。「続風土記」は地名の由来を付近の磯から光沢のある黒色の玉石が採取されるところから名づけられたと記す。硫化鉄を含んで硬度が高いため母岩が風化浸食された後に球状に残ったものが玉石である。「万葉集」の「わが恋ふる妹は逢はさず玉の浦に衣片敷き独りかも寝む」(巻9)の歌や,平忠度の「さよふけて月影さむく玉の浦のはなれ小島に千鳥なくなり」(夫木抄)の歌はこの地を詠んだものとされる。「続風土記」は,「玉の浦備後の国にも同名あり」と注記している。指摘される「属物発思歌」は瀬戸内の航行の途次に詠まれたものである(万葉集巻15)。現在,海岸線近くを鉄道が通り,磯・浜ともにせばめられているが今も白砂青松の趣は失われていない。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7172405