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富田川
【とんだがわ】


奈良県との境,果無(はてなし)山脈の南斜面に源を発し,西牟婁(にしむろ)郡を流れ,白浜町富田で紀伊水道に注ぐ川。2級河川。全長41.7km,流域面積211.1km(^2),河川箇所表による総延長33.618km。西牟婁郡中辺路(なかへち)町から大塔(おおとう)村をかすめ,上富田町から白浜町を経て海に入る。下流に形成する沖積平野は流域面積のわずか5%に過ぎないが,西牟婁郡中では上富田町朝来(あつそ)周辺が有数の水田地帯になっている。川名の由来は水田を豊かに富ませるという意味か。「続風土記」では上流部の栗栖川荘内で栗栖川,中流部の岩田郷内で岩田川,下流部の富田荘内で富田川と称している。岩田川沿岸には古代末から中世にかけて熊野街道中辺路が通り,「中右記」天仁2年10月23日の条には石田川とみえる。中世には熊野詣での垢離祓場として知られ,「平家物語」「源平盛衰記」等にも登場する。また岩田川は歌枕としても知られる。「続風土記」によれば舟運は栗栖川荘真砂(まなご)村(中辺路町真砂)から河口までの9里余であった。中流部の大塔村には重曹を含む炭酸泉の鮎川温泉が川原から湧出し,温泉名が示すようにアユの産地としても名高い。明治22年の大水害の際は上流部の土砂崩壊が激しく,水位が異常に高まり,下流部に大きな被害をもたらした。鮎川温泉付近は川の傾斜が急変する遷移点で,それより下流部では砂礫の堆積が激しく,従来天井川を形成していたが,昭和30年代の後半から砂利採取による川床低下,河川の改修工事などによって洪水の危険は少なくなった。中辺路町と大塔村の境界から河口にかけては国天然記念物のオオウナギが生息する。




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「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7172603