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七越峠
【ななこしとうげ】


父鬼(ふき)峠または父鬼越えともいう。伊都(いと)郡かつらぎ町と大阪府和泉市父鬼との間にある峠。峠名は,「名所図会」に「槙尾道は粉川寺より河内国槙尾寺へ詣づる道なり。道路穴伏川に添ひて葛城峰中,海士(あま)郡加太浦より起りて泉州へ越ゆる道……こゝにいたりて七道あり。故に七越峠と号す。また父鬼越ともいふ」とあり,「諸山縁起」に,「七興(ななこし)寺 如法経あり。閼伽の水,甘露の水あり。天地の峰の北にあり〈註,和泉山脈中の高峰三国山の南西間近にある七越峠附近にかつてあった寺か〉」とある。また「葛嶺雑記」には「竜宿山七越峠 泉・紀国境に常摂待,此山は往古竜宿山七興寺とて,七堂伽藍にして十余の堂塔宮祠四十余の僧舎あり。魏々たる霊場なりしに,平治の乱に焼亡せしこと古記にみえたり。大峰に比すれば,弥山が岳にひとしかりしと」とある。この竜宿山はいま宿山(しゆくやま)といい,峠のすぐ上の山,標高866mである。峠を越えて河内国槙尾寺へ,または逆に紀伊国粉河(こかわ)寺へと西国巡礼の旅姿の善男善女が多数往来し,峠は憩いの場所とされ,近年まで峠茶屋などもあったため,今でも峠を指して村人たちは茶所と呼んでいる。峠付近には3つの道標がある。1つは地蔵石仏道標で砂岩,高さ103cm,正面に「右まきのふみち 左さい所みち」とある。2つめは角柱花崗岩,高さ84cm。正面に「右粉川寺 すぐ堀越観音 左まきの尾 道」,右に「天保十二年丑□□」とある。左に「大阪世話人永伝 丹庄 淡長 □□」とある。3つめは棟型角柱,砂岩,高96cm。正面に「南 中まきのう道五十丁」,右に「東右こうや道七里」,左に「西堺七リ大坂十リ 紀州東谷邑小西氏」,裏面に「北 明和九壬辰天五月十日」とある。なお,かつらぎ町の折登から七越峠まで40町の間,町石が現在約20基あり,また七越峠から槙尾寺まで50町の間にも所々に町石が残り,旅人の眼をひきつける。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7172797