100辞書・辞典一括検索

JLogos

13

船岡山
【ふなおかやま】


伊都(いと)郡かつらぎ町島にある紀ノ川中にある中洲。背山と妹山の中間にあって俗に中山とも呼ばれる。「古今集」の「ながれては妹背の山の中におつる芳野の川のよしや世の中」とは,この辺りを詠ったものといわれる。「名所図会」や「続風土記」ではその形が船に似ることから命名されたとある。島中に厳島神社がある。明治維新の折,大部分が官有林となったが,明治39年再び厳島神社の境内地となった。島の南側一部斜面は風致を害しない程度に果樹が植えられ,付近から弥生中期・後期のものと考えられる土器等が出土して遺跡となっている。永承3年10月,時の関白藤原頼通が高野参詣の際,この地で船遊びをしたことが「宇治関白高野山御参詣記」に見え,同書によれば,「十七日壬午。天晴……爰解錦纜而漸擢。妹山山之紅葉浮沈。巻珠簾,而閑望。斜岸遠岸之青苔展。或有碧潭之湛々。或有白沙漠々。奇巌怪石繞之参差,古松老杉 亦以雑挿,凡毎所,无不驚眼 毎物莫不発興 其西不経幾程,蹔之 止御船」とある。また,「名所図会」には「粉河八景の詞書に云く,陽(みなみ)は妹山,陰(きた)に背山,山は南北にわかれ,芳野(よしの)川は中を東西に流れ,千年の松老いて枝さしかわせり。又妹背の中島とて,川中にえならぬ岩山あり。其形船に似たれば,船岡山ともいへり……南北山聳えて娥眉に比しつべし。松風颯々として天晴れ,流水岩にせがれて川音高く,碧潭の藍よりも青きに,秋の夜の月さやかに影を涵ひせるあはれさ,いとゆかし」とあり,まさに一幅の絵といえよう。紀ノ川では,当地一帯が唯一の峡谷的景観をなすところである。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7173416