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森浦湾
【もりうらわん】


東牟婁(ひがしむろ)郡太地(たいじ)町の市街地の西方,0.7kmにある湾。湾奥の山あいの小川に沿って森浦の集落がある。同集落は東側を太地町の標高80mの常渡半島で熊野灘の荒波や悪天候時の暴風を遮られ,西から北にかけて標高80mくらいの海に迫る那智勝浦町域の山並みで北西からの暴風を遮られている。湾口の常渡半島鷲ノ巣崎と対岸の那智勝浦町尾畑山との距離は1.5kmで,北東に開き,湾央の本浦と対岸の網干の鼻との距離は約0.3kmで,湾口から湾央にかけてくびれ,湾奥の森浦は袋状になっている。湾底は粘土混じりの砂礫質で碇のかかりがよい上に三方を山に囲まれているため天候の悪い時でも波が静かである。熊野灘沿岸地方の荒天時には東風が強く吹くので,帆船時代,湾口の広い当湾は避難入港に都合がよく,また,天候の良い日には陸から海に向かって西風が吹くので出港に便利であった。そのため日和待ち港として,伊豆の下田港と並び,太平洋岸における屈指の良港であり,帆船時代の台風襲来時期には熊野灘を航行する大小の避難船が100隻を超え,湾内を埋め,帆柱が林立したという。悪天候が続くと,港の森浦では船乗りと近隣の若者の間で日和相撲をとるための土俵も作られていたという。しかし,明治末期から動力船が出現し,風待ち船も入港せず,森浦~勝浦間の巡航船も鉄道の開通で姿を消し,現在は台風時に太地町と近隣町村の小型漁船がこの港に避難するのみである。波静かな湾内を真珠養殖とハマチ養殖の筏が埋め尽くしている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7173850