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扇ノ山
【おうぎのせん】


岩美郡・八頭(やず)郡と兵庫県美方郡の県境にそびえる山。標高1,309m。山形が秀麗で,左右に尾根を広げて遠くから鳥取平野を抱くようにそびえている姿は,扇を広げた形に似ており,山名の由来でもある。当山は第三紀末期から第四紀にかけて活動した死火山で山容はその後の開析により現在は火山地形をわずかに残すのみであるが,噴出溶岩による標高1,000m近い高原面が四方に発達し,広留野・河合谷高原・畑ケ平・上山高原などを形成し,頂上付近には穴ガ原と通称されるくぼ地がある。山脚は標高700~800mあたりから断崖状となってV字状の渓谷をつくり,そのあたりを中心に雨滝・大鹿滝・諸鹿七滝など多くの滝を発達させている。残存原始林は少なく,頂上部付近のブナ・カエデ・スギなどの自然林は特別保護地区になっている。上地川上流には中国地方には珍しいハコネサンショウウオとヒダサンショウウオが発見されている。民俗学的資料ともなる木地屋屋敷跡や藩政期には寺屋敷・長者屋敷と呼ばれるところが山麓の各地に見られ国境警備の防人が置かれたこともあった。大正初期には河合谷高原を牧場として牛を放牧し,最盛期には200頭あまりの乳牛が飼われていた。頂上の展望は兵庫県北部,県東部地方および日本海を眼下に見下ろしてすばらしい。春のウド・ギボシ・フキなどの採取。夏のキャンプ,秋の紅葉などに利用されるが,まだ一般登山者が少なく,山岳愛好者の興味を集めている。主な登山コースは,八頭郡八東(はつとう)町富枝から妻鹿野・滝谷を経て頂上へ,同郡郡家(こおげ)町姫路までバスでそこから頂上へ,岩美郡国府町上地までバスでそこから頂上へ,また,八頭郡八東町富枝から妻鹿野・滝谷コースは林道が整備され自動車で兵庫県へ抜けることができる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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