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鷲峰山
【じゅうぼうざん】


気高(けたか)郡鹿野町の南端にある山。標高920.6m。山名はインドの霊山の名をとったものと伝えられている。八千矛の神が鷲に乗って降った山だから鷲峰というといったり,古い時代にここに10の坊舎があったので十坊山と名付けたが,後に鷲峰山というようになったといわれている。「稲葉民談記」に「鷲峰ハ当国中ノ高山也。自余ノ高キ山ハ皆峰ニ続キテ屏風ヲ引キ回シタル如クニシテ,山ノ景象美シカラズ。此ノ山ハ半腹ヨリ上山巓挺秀シテ地勢屈起セリ。上ハチ千仞ノ剣峯青霄ヲ衝破シ,下ハ四面ノ朶嶺翠岫栄帯セリ。……山ヲ鷲峰ト云(ヒ)麓ヲ鹿野ト云(ヘ)ルコト,イツノ世ニ名付ケルニヤ。故アル名称共面白ク覚ヘ侍ル。近比ノ領主亀井殿文字ノ才覚有リテ,多クノ物ノ名ドモヲ改(メ)玉フ故,是モ亀井殿名付ケ玉フト云フ者有レド神名記ニ鹿野社ノ名有リ。又古キ記ニ鷲峯ナドモアレバ,往古ヨリ久シキ名トミヘタリ」とある。また,鷲峰の名は,「三代実録」巻6貞観4年9月の条に「八日甲戌授(二)因幡国正六位上鷲峰神従五位下(一)」とみられる。「伯耆民談記」に「むかし,鷲峰山はいまよりもっと高い山であった。伯耆(ほうき)の大山(だいせん)と背くらべをしたところ,大山の方が低かったので大山は大いにくやしがり,鉄の大杓子で鷲峰山の頭をすくいとって捨てた。その捨てた土が山になり,これが東伯(とうはく)郡北条町に孤立している茶臼山という」との伝説が記されている。山体は中生代の花崗岩類の基盤を貫いて噴出した第三紀鮮新世の安山岩からなる。昔から九十九谷と呼ばれ,山肌の変化と山塊の基盤の広い美しい山である。山の北側と南側の一部に天然の針葉樹林と広葉樹林がみられるが,かなりの部分が人工の針葉樹林である。頂上からの眺望は浜村・青谷・長尾岬・湖山池が手にとるように広がり,遠く西に大山なども眺められる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7175601