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那岐山
【なぎのせん】


八頭(やず)郡智頭町の南端,岡山県境にある山。「なぎさん」とも呼ぶ。山頂三角点の標高は1,240mであるが,最高点は三角点の東に隣するピークで,少くとも10mは高い。因幡(いなば)国の最南端に位置している。山名の「なぎ」について,「地名の語源」には,崩壊地(ガレ)を表す例としてあげているが,当山にそのような地形は見られず,山裾の「ナギ畑」にかかわるものかも知れぬという説(荻原直正:因伯地名雑話)の方が妥当である。当山は,地形,植生などの自然に特色があり,地形的には独立峰としての性格を有し,さらに南面(岡山県側)は断層崖ともいわれる比較的浸食度の小さい斜面の下は,「日本原」などの台地と,沖積地の交錯する津山盆地となり,その南は吉備高原が続くため,同程度の高さの山並の鳥取県側と対称的である。このため,因幡地方の他の山岳に比して風が強く,殊に南面に吹きおりた風は,日本原一帯に「広戸風」とよばれる著名な局地風をもたらす。さらに,山の位置が南に偏し,北西に三国山地が横たわるせいか,積雪量が少ない。この気候環境は植生を特色あるものにしている。滝山(1,192m)へかけての主稜線に広く発達した風衝植生は,当山に高山的な風貌を与えている。近年智頭町が,チマキザサのササ原と低木林からなる当山の植生のうちこのサラサドウダンやブナ林内に生育するベニドウダンを栽培化し,特産品として振興に努めている。その他,マイズルソウ・アカモノ・ウラジロハナヒリノキ・クロゴケ・コゴメグサなどの山岳性種が生育し,河津原登山道に見られるシャクナゲ群落もよく知られており。全体的にこの山の植生は表日本的な性格を有しているといえる。当山は,すでに明治・大正期より一般人や学校行事による登山が行われており,その点も近隣山岳に類を見ないところである。登山道は智頭町奥本と河津原よりそれぞれ通じており,岡山県側よりは数本のコースがひらかれていて,四季を通じ山頂をきわめる人が多い。眺望がきわめて広く,地理的学習に好適である。1,100m前後の風衝帯以下は,古い歴史を有するスギの造林帯で,ブナ林は一部しか残存しない。したがって動物相は比較的単純である。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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