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福永原
【ふくながはら】


日野郡溝口町,大山(だいせん)西南麓に広がる大原野。標高500~900m。原面は新期大山火山活動による火砕流や火山放出物による高原状平坦面である。南壁に発する大崩壊の沢・一の沢・二の沢・三の沢の下流に当たり,続成作用は進んではいないが砂礫の大供給もあって崩壊がはげしく原面の上に幼年期的な地形を残す。未団結の堆積物のため河川は発達せず,伏流水となっているため,浸食作用は発達していない。この地域は古くから開拓の試みがなされたが,水資源の不足は決定的で各所にその労苦をしのばせる構築物の池や水路が残り,また様々の伝承が伝えられている。第2次大戦後の農業政策により,農林省によって買収され開拓が試みられたが,標高550m以上の390町歩にわたる地域は飲料水すらなく,開墾地には不適当とされ,昭和31年陸上自衛隊日光演習場に充てられたほどである。福永原は溝口町と江府(こうふ)町にまたがり,開墾が進んだのは溝口町に属する区域であり,自衛隊の演習場に充てられている区域の大部分は江府町に属する。原野は広葉樹林帯に包括される草原で,ススキ・ネザサ・シバが主である。通称「大滝原」という採草地があるが,この草原を中心に約5haにわたり,ネムノキの大群落がみられる。福永の地名の由来には伝説がある。農夫福右衛門と永蔵は,野もの(けもの)の被害がひどいのでこの村を捨てようと悩んでいたところへ白髪の老人が現れて,この種を蒔いてみよと告げられ,種を蒔いたところ,みるみる生長し,菖蒲の畑となり,野ものの襲来を避けることができたといわれ,この地域を菖蒲平といい今でも地名として残る。福永原は2人の農夫の名からきたものだという。野ものとは恐らくこの沢の土石流を指すのであろう。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7176725