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三滝
【みたき】


千代(せんだい)川中流の支流である曳田(ひけた)川上流最奥地にかかる滝。上流域の川床周辺は標高600~700m付近まで古くて軟らかい石英粗面岩で,部分的に黒雲母花崗岩と閃緑岩などの深成岩が露出するところがある。これらの地層の上に高山(1,053.6m)や高鉢山(1,203m)の新しくて硬い安山岩類が覆いかぶさっている。曳田川はこれら硬軟の岩石を選択的に谷頭浸食を行い,支流は懸谷状を呈し,長さ約6kmにわたって多くの滝や急流が残り,いわゆる三滝渓を形成した。これらの滝の中で奥から2番目にあるのが三滝不動滝で,地元北村地内のいい伝えでは滝の上部がみごとにオーバーハングになって,ここから勢いよく滝壺に落下し,その裏側に観音像に酷似した岩が立っており,この滝を三滝と呼んでいたようである。したがって,三滝の「三」は尊敬を表す「御」に由来する。この不動滝をはじめとする三滝渓は,昭和31年瀑布・渓流美として県の名勝に指定され,口・中・奥の三景勝に分かれている。口の景勝は権現が森のツバキ・タブノキの原生林やその下の渓谷・急潭が美しく,ケンカ岩・夫婦岩など巨岩が道路近くに分布する。中の景勝は最奥の集落戸数5戸の杣小屋(そまごや)から始まり,幅広く水量が多い魚止めの滝・虹ケ滝・銚子ケ口・夫婦滝の景観がある。奥の景勝は両岸相せまる幽門峡・蛇淵(じやぶち)・門滝,約70度の千丈滑(せんじようなめ)を75m落下する千丈滝,横谷滝・不動滝・白糸の滝と続く。付近はシャクナゲ・アカミノイヌツゲ・エゾユズリハ・シラネワラビ・イワカガミ・ウンゼンマンネングサ・カワイワタケなど特色ある植物も分布している。三滝渓は地形が険しく秘境で,道らしい道がなく,急斜面に設けられたクサリを伝うなどして滝巡りをする難コースのため,訪れる人は少なく雄大な大自然が残されている。地元河原(かわはら)町では農林省の新林業構造改善事業の指定を受け,昭和56年~58年の3か年計画で,三滝渓14haを総事業費2億円を投入し,総合開発に着手している。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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