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伊賦夜坂
【いふやざか】


「古事記」にみえる坂名。諸説があるが一般的には現在の八束(やつか)郡東出雲(ひがしいずも)町揖屋(いや)町の平賀(ひらか)地内に比定。南方の星上山から北に延びて崎田(さきた)鼻となり中海(なかのうみ)に突き出す丘陵を,東西に走る山陰道が当地で越えた。現在は国道9号と国道山陰本線が通る。「古事記」は夜見国の亡き妻伊邪那美命に追われた伊邪那岐命が,千引石(ちびきのいわ)で死者の世界の入口黄泉比良坂(よもつひらさか)をふさいで逃げたと述べ,黄泉比良坂は「今出雲国の伊賦夜坂を謂うなり」と記す。付近の,「風土記」に伊布夜社(いふやのやしろ)と見える揖夜神社は「日本書紀」斉明天皇の5年の条に「是の歳,出雲の国造に命じて厳しき神の宮を修めしむ。(中略)狗,死人の手臂(ただむき)を言屋(いうやの)社に嚙み置けり。言屋,これを伊浮瑘という。天子崩ります兆なり」とみえ,揖夜神社が黄泉国すなわち死の世界に縁の深い社として古くから中央でも重視された社であったことがうかがわれる(風土記参究)。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7177849