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焼火山
【たくひさん】


隠岐(おき)郡西ノ島町大字波止(はし)にある山。標高452m。焼火という山名の起源は明らかではないが,古代以来の灯台の火を意味するものであろう。地質学的には島前(どうぜん)玄武岩台地の中に屹立している石英粗面岩の山である。島前の地形は西ノ島町・中ノ島町・知夫(ちぶ)村と一連の玄武岩台地を形成しているが,この3島に囲まれた中央部が浦郷(うらごう)湾・別府(べつぷ)湾として陥没していてカルデラ状になっている。焼火山はこのカルデラの中央部に噴出した中央火口丘,したがって別府・美田(みた)間の鞍部と前記2湾が火口原と目されている。焼火山は著名な帆船航海者の信仰対象の山で,近世においては讃岐(さぬき)の金刀比羅宮と並び,隠岐の焼火権現としてあがめられた。焼火山が日本海航海者の目安となっていたことはすでに六国史の中に記されている。平坦な玄武岩台地の上に突兀として焼火山がそびえ,その頂上付近には広大な社地をもつ焼火神社がある。社殿は中腹の岩窟内にあり,杉の巨木におおわれている。大灯籠は灯火が点ぜられ灯台の役目を果たして来た。社前寄進の灯籠は各地の帆船業者からのもので,その信仰圏は西廻り海運航路のみならず,三陸方面にも及ぶ。現在山頂にはNHK中継放送局が設置されている。焼火山麓は島前第一の森林地で,山をめぐる8か村の入会林があって,用材・薪炭材の切り出しが行われたが,近世,しばしば入会権の行使をめぐって山論が繰り返された。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7179897