松島
【まつしま】

日本海上にある隠岐(おき)群島の１つ。中ノ島能田(のだ)鼻から約３kmに位置する。隠岐郡海士(あま)町大字豊田(とよだ)に所属。南北1.5km・東西１km・高さ126m。海岸は断崖となっている。隠岐群島で最大の無人島。松島とは近代に入ってからの命名で，江戸期には豊田島と称した。「隠州記」豊田村の条に「家村の東之沖に豊田島と云えり，周り一里余，頂上に松生ず。立山也，芽も生ず，此島に月輪大明神，鹿島大明神を奉崇し，東の方に蔵ケ泊，中泊りとて二つの入江ありて舟懸りによし」と見える。「隠州記」に記された「立山」とは，江戸期代官の支配化にあった公有林のことで，代官が公用伐採を命ずるとき以外は斧を入れることはできなかった。蔵ケ泊・中泊りは北西の強風を防ぐ湾入で，帆船の避難所として利用された。月輪大明神・鹿島大明神の社祠は現在は消滅しているが，無人島の聖域として重要な信仰対象である。付近の海域はイカ・ブリ・トビウオ・タイの好漁場で，釣漁業が盛んである。隠岐群島はこの松島の他に著名なものとして蛸木(たくぎ)の松島・代(しろ)の松島・卯敷(うずき)の松島などがある。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7181319