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弥山
【みせん】


邑智(おおち)郡瑞穂(みずほ)町大字岩屋の谷頭にある山。標高610m。山陰・山陽国境をなす上平(あげひら)上の北山腹が,千代国峠の鞍部をおいてさらに北東にのびた先端で,中国山地を一望できる位置にある。志都岩屋神社の神域で甘南備寺山である。「万葉集」巻3に生石村主(おいしのすぐり)真人は「大汝(おおなむち)少彦名(すくなひこな)のいましけむ志都の石室は幾世経ぬらむ」と詠み,本居宣長「玉勝間」巻9「石見国なるしづの岩屋」と題し,「石見国邑智郡岩屋村というに,いと大きなる岩屋あり,里人しずの岩屋という,出雲備後のさかいに近きところにて(中略)生石村主真人という人,もし石見国の官人(つかさびと)などにして,かの国に在て,ゆきてよめらむはしらず,さもあらざらむには,かの国は,他国人(ことくにひと)のゆくことまれなるに,殊にさばかり山ふかきおくどこならむには,よの人のしりてよむべきものともおぼえず,されど後の世の人の,つくりていうべきところともおぼえねば(後略)」とある。「地名辞書」にも登載されている。弥山の山腹一帯に分布する岩塊は地質学的に「岩城(いわじろ)と岩塊流」という。岩城には潜り岩・鏡岩・古志都・千畳敷・奥の院・中天狗(なかてんぐ)岩・夫婦岩・行場岩と石割松・蛇(じや)の鼻・屏風(びようぶ)岩・上天狗岩・廻り岩・飛び岩・はさり岩・下天狗岩・神集(つど)い岩などが標高570m線上に分布し,修験者の道場になり,仏教信仰に由来する固有名称がある。南東斜面には3つの岩塊流があって樹木が繁茂し,全貌を現さない。弥山の山頂から高位隆起準平原面の阿佐山,等高性の中国高原面,三瓶山のトロイデ火山などの山容を望見し,眼下には黒ん坊(くろんぼう)の谷・鳥居原の谷を通して七神社の社叢を中心とした出羽(いずわ)集落の町並み,出羽川の流れなどが展開する。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7181415