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荒戸山
【あらとやま】


阿哲郡哲多町の西北部に位置する山。標高761.9m。鍋を伏せたように見えることから鍋山とも呼ばれ,阿哲富士ともいう。玄武岩鐘で,吉備高原の県西北部から広島県にかけて同じような姿の山は明神山・高山・猪の辻山など60近くもある。これらの山は碁盤の目のように配列しており,荒戸山はその中の最高峰で形も美しい。成因は,約1億年前の中生代の終わりごろ噴出し,吉備高原を形成している花崗岩と流紋岩の境目を,約200万年前の新生代第三紀の終わりから第四紀のはじめにかけて,地下のマグマが上昇して溶岩台地を形成した。その後,風雨などの浸食作用により溶岩台地は削られ,マグマの通路だけが残丘地形として残った。8合目付近には鉢巻状に玄武岩の露頭が見え,柱状節理も観察できる。周辺一帯は,俗にクロボクといわれる微粒子の黒土が第三紀層を覆っている。山名の由来は,神霊が出現する山「阿礼」にちなむと伝えられる。古代より雨乞の山として崇められており,室町期には山頂に雨乞いの神である荒戸神社が祀られていたが,文安年間山麓の現在地に移された。室町末期の動乱時には,馬酔木城主高橋藤太が,山頂に一時砦を築いている。昭和初期頃から東・西の斜面8合目より下はスギ・ヒノキが植林されたが,南面の荒戸神社周辺から山頂にかけては,ケヤキ・クヌギ・コナラ・カシワ・アセビ・シデなど,樹齢200年を超える自然林で覆われている。また,ナンザンスミレ・トチバニンジン・イワギボシ・イワデンダ・コオニユリなどの草花も見られる。山麓一帯の高原には本州スズラン(キミカゲソウ)が自生しており,5月下旬には可憐な花をつける。山麓一帯は近年牧場開発が進められ,広大な牧草地となっている。山頂へは遊歩道があり,30分ぐらいで登れるが,樹木があるため展望はよくない。樹間からは大飯盆地・吉備高原が一望され,北は中国山地をこえて鳥取県の大山が望まれる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7182081