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井倉峡
【いくらきょう】


新見市井倉のJR伯備線井倉駅付近から下流約8kmの草間字広石付近までをいう。高梁(たかはし)川が阿哲台の石灰岩をV字状に刻んだ峡谷で,阿哲台は左岸の草間台と右岸の石蟹郷(いしがさと)台に分けられる。昭和41年3月25日,阿哲台を中心とし,井倉峡に展開するカルスト景観および高梁市の臥牛山などが高梁川上流県立自然公園に指定された。井倉峡を代表するものに井倉洞・絹掛の滝などがあり,流域の各所で石灰岩の断崖絶壁,それにかかる懸谷(滝)やその下にたたずむ淵を見ることができ,四季折々の景観を楽しむことができる。井倉洞は昭和33年に発見されたもので,240mに及ぶ断崖絶壁のびょうぶ岳(観音岳)に開口する全長約1.2kmの鍾乳洞で,川の曲流部はえぐられて舟かくし・阿里佐淵がある。井倉洞を約4kmほど下ると,左岸にあたかも白絹をたらしたような高さ約50mの絹掛の滝がある。その対岸の岸壁の中ほどには鬼女洞があり,以前は絹掛の滝の前あたりから渡しがあったが現在はなく,訪れる人はほとんどない。この付近から下流は棚が瀬といい,かつて主要交通であった高瀬舟の難所であった。川面には多くの岩が点在して瀬をなし,左岸の常緑樹の老木と相まって大変美しい。昭和4年にこの地を訪れた与謝野鉄幹・晶子夫妻も「岩山を空にたてたる渓のかべゑがける如き夕紅葉かな」(鉄幹),「わが舟に紅葉を人のさしつれば高梁川のうき嶋となる」(晶子)と井倉峡の美しさを詠んでいる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7182121