100辞書・辞典一括検索

JLogos

40

牛窓諸島
【うしまどしょとう】


牛窓半島の沖合にある前島を主島とする諸島。日生(ひなせ)諸島とともに東備海岸を色どっている。牛窓半島の先端沖に鼠島があり,牛窓港の沖に牛窓瀬戸を隔てて前島が東西に長く横たわり,前島の南東に青島,南に黄島,南西に黒島がある。いずれも海面上から5mほどに平坦面がある。黄島と黒島には縄文早期の貝塚があり,下層は両貝塚ともヤマトシジミを主体とし,上層は黄島貝塚ではハイガイを主体にヤマトシジミがあり,黒島貝塚ではヤマトシジミを主体にハイガイ・カキが混じる。これらの島の浅瀬ではアサリが採集できるが,ヤマトシジミ・ハイガイは採集できない。このようなことや出土土器の古さから更新世の氷期に陸化していた瀬戸内に,後氷期になって海水が流入してきたある時期の環境を示す遺跡として知られる。下層に淡水産のヤマトシジミと上層に海産のハイガイのあることから,縄文期に海水位が上昇し,周辺の海の塩分に大きな変化のあったことがわかる。伝説によれば仲哀天皇,神功皇后同道で三韓遠征の途中牛窓の浦にさしかかったとき,塵輪鬼という怪物が天皇を襲った。天皇がこれを討つと首は鬼島(現在の黄島),胴は塵輪島(現在の前島),尾は尾島(現在の青島)となったが,天皇も塵輪鬼に討たれてこの地で崩御した。皇后は男装して三韓を討ち,凱旋の途中この浦で塵輪鬼が牛鬼となって襲ったが,住吉明神がその角を捕えて投げ倒し,牛鬼の死骸は骸(むくろ)島(現在の黒島)になったという(吉備温故秘録)。黒島の最高所に5世紀後半ないし6世紀前半の築造と推定される前方後円墳があり,牛窓半島および牛窓諸島を勢力圏とした首長によって造られたものと考えられている(県史考古資料)。青島は流紋岩質,ほかは花崗岩質からなる丘陵である。前島は牛窓諸島最大の島で,人口約200人の集落があり,海水浴場・民宿などがある。黒島は岡山県青少年の島に指定され,キャンプ施設がつくられている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7182372