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吉備中山
【きびのなかやま】


岡山市の西端にある独立山塊。東西約2km,南北約2.5km,面積約75haで,最高所は北端の支峰竜王山で,標高175m。山体は南北に双子状になり,古生層からなる。山肌は,古図によればアカマツに覆われていたと考えられるが,現在はアカマツのもとに落葉広葉樹がみられる地域が最も多い。山名は備前と備中にまたがるところから名づけられた。また,頼山陽はその山容から鯉山(りざん)と命名した。丘陵一帯には,中山茶臼山古墳・尾上車山古墳(国史跡)・矢藤治山古墳など,後期古墳が二十数基数えられる。また雨乞の山として知られる竜王山が2つあり,巨石を配置した磐座とみられるものも何か所かあり,北端の竜王山山頂には竜神社や経塚遺跡がある。吉備中山は文化財を包蔵する丘陵としてばかりでなく,「かんなび山」として尊崇されていた山といえる。「古今集」には「まがねふく吉備の中山おびにせる細谷川の音のさやけさ」と詠われ,三条西家旧蔵本「枕草子」では,山づくしに吉備の中山も加えられている。「梁塵秘抄」などにも歌が収められており,和歌の題材として取り上げられた名山である。北麓には備中一宮の吉備津神社,東麓には備前一宮の吉備津彦神社があり,細谷川が流れ落ちる所には福田海本部,その中腹には藤原成親遺跡(県史跡)がある。この山塊の中央部には岡山県古代吉備文化財センターがあり,その南西尾根には吉備無線中継所,その東側には厚生年金岡山吉備荘・黒住教本部がある。吉備中山から,西は総社市三輪に及ぶ一帯は,人文景観に加えて自然景観も優れているところから,昭和41年吉備史跡県立自然公園に指定された。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7183411