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鯉ケ窪湿原
【こいがくぼしつげん】


阿哲郡哲西町矢田の矢田谷にある標高550mの鯉ケ窪池周辺の湿原。安政年間に松山藩主板倉勝静によって灌漑用貯水池として修築された。昭和20年代に用水量の増大を目的に堤の嵩上げが行われ,水位が約1m上昇したことで湿原面積はかなり縮小した。鯉ケ窪池の上流部には土地の人々がサワッタ(沢っ田)と呼ぶ湿地があり,湿性植物の大群落がある。昭和55年には鯉ケ窪湿性植物群落として約27haが国天然記念物として指定された。西日本では屈指の湿原で西の尾瀬と称され,近年急速に注目を浴びてきた。鯉ケ窪池の周囲には約1時間コースの遊歩道があり,四季折々の湿性植物群落を楽しむことができる。5月にはリュウキンカの群落が一斉に黄金色の花を咲かせ,サワオグルマやアギスミレも可憐な花を咲かす。水中の赤松の落葉にはカムリタケが群生する。6月にはハンカイソウが黄色の花を,ノハナショウブが紫の花を咲かせる。夏から初秋にかけてはヒツジグサが水面に白い花を浮かべ,7月下旬から8月下旬にかけてはオグラセンノウの赤い花,サギソウの白く可憐な花が訪れた人の目を引く。湿原には昆虫も多く,世界最小のトンボであるハッチョウトンボをはじめクロイトトンボやヒメヒカゲなどが集まる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7183610