辰巳峠
【たつみとうげ】

苫田郡上斎原村宮ケ谷と鳥取県佐治村栃原を結ぶ峠。標高786ｍ。国道179号と国道53号を結ぶ県道江府中和用瀬線上にある。「作陽誌」に「田住乢因作之界」とあり，また文政年間の「美作国絵図」には「田角峠　難所」とあって「辰巳」に通ずる地名が記されているが，現在の呼称になったについては定かではない。かつての因幡往来で上斎原村と佐治村との交流をもたらし，現在上斎原村に伝わる昔話には佐治谷話が多い。新第三紀中新世には人形峠湖盆の静水域に堆積が続き陸水成層の人形峠層を形成，ウラン鉱床を含む。この峠付近の泥岩・砂岩の互層には植物化石のほか魚類・昆虫の化石も多く学術的に貴重な存在となっている。中国山地の谷を東西に結ぶこの峠の両側では地形が異なり，佐治川の谷頭浸食が進む鳥取県側は険しい谷をなし道路も屈曲が著しい。一方恩原高原面に連続する岡山県側は平坦で道路も直線的で観光道路としても利用されている。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7184857