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中国山地
【ちゅうごくさんち】


中国山地の名称は中国地方の脊梁部をなす山地のみを指す場合と,中国地方の山地という意味で吉備高原などを含めて広い範囲を指す場合があるが,一般的には前者を中国山地という。かつては中国山脈といわれたが,昭和29年地理調査所(現国土地理院)の用語の統一により中国山地が使用されるようになった。山頂がなだらかな山が多い地形を山地というが,中国山地は中国地方の脊梁部を標高1,000~1,300mの山頂を連ねて東北東から西南西に走り,北へ湾曲しており,範囲は京都府由良川と兵庫県加古川の谷を結ぶ線から西方で,山口県までにわたる。島根県江(ごう)川の谷によって東西に二分し,東中国山地と西中国山地・冠(かんむり)山山地などと呼ぶこともある。岡山県に属する中国山地は東中国山地であり,脊梁部は北に偏しほぼ東西方向に走る。東から県下最高峰の後山,那岐山,大ケ山,花知ケ山,津黒山,星山,毛無山,雄山などの山塊が並ぶ。これら主脈から少し北にはずれて蒜山(ひるぜん)山地群がある。蒜山山地は第三紀末に噴出した安山岩類からなるが,浸食が進み火山の原形はかなり崩されている。蒜山山地の北西に第四紀に噴出した大山火山がある。中国山地は全体としては東西方向に走るが,細分すると北東―南西方向の山塊が雁行状に連なる。河谷もこの方向に流れるものが多い。構成地質は古生層,花崗岩類,流紋岩類,安山岩類が多く,風化・浸食が進み,標高1,000~1,200mの主山塊の周辺には500~600mの標高を持つ丘陵性の山間小盆地が発達し,中国山地内の生活の中心となっている。中国山地の気候は,分水界が北偏することによって規定されている。全体としては瀬戸内気候に類似し,山地的特性(低温・多雨・雷雨)は弱い。降水量・気温ともに高度差を考慮すれば岡山市と異なるとは考えられない。しかし,北西の季節風の強い冬は,脊梁山地の鞍部(峠)から雪がしのび込み,谷沿いに積雪をみせる。中国山地はその南北の縁辺部に古生層の変成岩帯が残存するため険しいが,中央部は花崗岩類の卓越するなだらかな丘陵性の地域が広く,人々の往来に困難を感ずる山地ではなかった。そのため山陽―山陰間の道として伯耆往来,出雲往来をはじめ,北偏する脊梁山地の峠のある部分にはいずれも陰陽間の道が発達し,さらに山間部においては縦横に道が発達していた。したがって,山地内の社会的結合も谷筋を中心とする線的なものでなく,面的なもので,特に真庭郡内の山間部においては山中(さんちゆう)と呼ばれていた地域を形成し,共同体意識が強かった。現在JR伯備線・因美線の横断鉄道,国道180号・181号・313号・179号・53号・373号の各国道が陰陽を結んでいる。中国山地内は古代からたたら製鉄の盛んな地域であった。これは,山地内に広く分布する花崗岩類の厚い風化土と,豊富な薪炭の存在のためであったが,これも明治中期以後は衰退し,その後,放牧による和牛生産,育林事業と産業は変化し,現在は酪農・園芸農業・観光の一中心地を形成している。




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「角川日本地名大辞典」
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