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鶴坂
【つるさか】


久米郡久米町内の西部,国道181号に沿う坪井下地内の峠。この181号に沿う久米川流域の低地は,いわゆる中国線と呼ばれる江見―津山―目木―久世―勝山―大佐―新見と連なる盆地列に位置している。この盆地列は中国山地と吉備高原が分離,中国山地部が曲隆,断層により上昇する過程で起こった縁辺部の下降運動によるとされる。鶴坂の位置する久米川流域もこの時下降したもので,古生層(三郡変成岩)を構造底とし,この上に新生代第三紀層が堆積している。鶴坂周辺の水田地帯は三郡変成岩類のうち,黒色片岩・緑色片岩の地域で,鶴坂神社の位置する小丘陵(200~210m)に第三紀層の堆積が見られる。鶴坂は,元弘の乱によって隠岐に配流された後醍醐天皇が,その途次,休息した故地と伝承されている。もとの郷社鶴坂神社は「旧美作国百十二社記」に見える吉村神社(町内中北下にあったという)と他の1社を合わせ,後醍醐伝説のこの地に勧請されたものである。鶴坂の東に位置する坪井から院庄へのルートは古来からの要路であり,江戸期の出雲往来の筋であった。鶴坂は「作陽誌」に弦阪と見え,「坪井下村にあって,登り一町五十間下り二町二十間」と記載されている。当時,津山からの往来筋で,上り下りの距離がこれだけあったものであろう。現在もこの久米川筋はJR姫新線,国道181号の通る要路であるが,国道は鶴坂を南にはずれて,ひっそりとしたたたずまいとなっている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7185110