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人形仙
【にんぎょうせん】


苫田郡上斎原村と鳥取県三朝町との境にある山。標高1,004m。中国山地の分水嶺で,中生代後期から新生代前期に形成された花崗岩類よりなる。鳥取県側は谷頭浸食が進み急傾斜をなすが,岡山県側は緩斜面が多く,かつては牛の放牧地に利用されていた。近世には津山から倉吉への往来は人形仙川をさかのぼり,この山の東下あたりを通過した。「作陽誌」には「人形山,この道は伯州河村郡穴鴨村に出る……北西一町ばかりを人形峠という」とあり,また同書は地名の由来について,この峠には大きな蜂がいて旅人を悩ませていたが,この地を通りかかった高僧がこの話をきき村人に木の人形を作らせ,人形の体全体に字を書いてこれを3日間峠に立てさせたところ大きな蜂が人形のそばで死んでいたので人形とともに土中に埋めたという伝承によると記されている。また,ある日きこりが山中で仙人に会い人魚の肉を得て食したところ年老いてから骨がばらばらになったので人魚山と云われるようになったとも記されている。この峠道が大幹線林道と交差する標高740mの地点に三十七霊供養塔がある。人形仙一帯は古くから砂鉄採取地で鉄穴地形も至る所に見られるが,明治12年鉄山従事者がコレラのため死亡,その霊を慰めるため建立されたもの。頂上へはこの峠道を利用し分水嶺に沿って登ることができる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7185761