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櫃ケ山
【ひつがせん】


真庭郡湯原町南部にある山。標高954m。旭川とその支流新庄川に挟まれた星山山地の東辺をなし,主脈は中生代の花崗閃緑岩よりなる。頂上直下の東面は数十mの岩壁帯で,東の旭川河谷側が著しい急斜をなし,河岸の登山口久納(くんのう)からの比高は約650mある。社口ダム(湯原ダム第2堰堤)方面からの山容は尖った三角形で,「作陽誌」にも山勢聳抜とうたわれ,伯耆大山の狗嬪(天狗)が遊びに来るという民話も残る。頂上付近はクマザサとカヤの草原で,頂上北の854mピークの北面に天狗の森と呼ばれるブナの原始林が残るが,これは県下の標高の下限,分布の南限で町天然記念物に指定されている。ここには天保年間の勧請と伝えられる天狗小祠があり,角力等の勝負事に信仰され,第2次大戦中には武運長久祈願に山中方面からも山を埋めるほどの信仰があった(湯原町誌)。南面山腹の大庭皿には昭和40年頃まで人家があり,近くに古墳もある。ここから河谷沿いを避け尾根を越して勝山町菅谷・星山方面への旧道も通じていた。山体北面はなだらかな傾斜をなし,古くから採草地や牛の放牧場として利用されていた。近年,禾津(いなつ)から櫃ケ山・星山山腹の南東面を通り,美甘(みかも)村黒田に抜ける広域基幹林道作西線が着工され,山林開発の一助にと期待されている。山麓には,北の鉄山(かねやま)川沿いの郷緑,旭川沿いの禾津・足・真賀と湯原温泉郷を構成する温泉があり,国民保養温泉地に指定されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7186161