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矢坂山
【やさかやま】


万成山ともいう。岡山市街地の西端に位置する丘陵。標高131m。かつては吉備の穴海(瀬戸内海の一部)に浮かぶ小島であり,そのころは東隣の京山とともに岩井島と呼ばれていたという(万葉集巻15)。「群書類従」所収の「大安寺流記資財帳」には石木山と記されており,天平16年の時点では,その南にすでに長江葦原と呼ばれる50町歩の墾田ができていた。石木山とは,全山花崗岩とその風化した土砂からなり,樹種に乏しく,山頂に近づくにつれて矮松と巨岩をみるこの山塊の特徴をよくとらえた命名であった。この山塊は,南麓の西崎の谷あいと,北麓の竜王谷を結ぶ線でほぼ二分され(かつての村落の境界線),西側の主峰が矢坂山,東側の中心が万成山と呼ばれており,この山塊はいずれかの名で代表される。支峰としては南側に魚見山・妙見山がある。西側の矢坂山側には,総延長約300mにわたって連郭式山城が築かれていた。富山大掾重興が仁和年間に築城したとの伝承によって,富山城と呼ばれるが本格的城郭として機能したのは戦国期である。花崗岩の採石は,明治17年万成に石材店が創業してから本格的となり,山陽鉄道の敷設に多量の石材を万成山から切り出したので,万成石と呼ばれるようになり,大正年間の明治神宮の造営に使用されて全国に名をはせた。万成石は,半透明な石英,白色の斜長石,黒色の黒雲母に加えて,桃色のカリ長石が3分の1ほど含まれる肉紅色で特有の光沢を発する美しい石材であるため,建材としての需要が多く,丁場も増え,山はしだいに消えつつある。この山塊には法事古墳をはじめとする約50の古墳があり,巨石の岩陰には祭祀遺跡もある。また,矢坂山と万成山の間の窪地には貯水能力3万tの矢坂山配水場が建設され,三野浄水場の負担の一部を肩代わりしている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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