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王貫峠
【おうぬきだわ】


阿井越ともいった。比婆郡高野町と島根県仁多町との境にある峠。県北部の中国山地脊梁部に位置し,大万木山塊と猿政山塊に挟まれる。標高660m。国道432号が峠道となる。当地は北方斐伊川の支流阿井川が,江の川水系の支流和南原川の上流部を河川争奪したため,北方斜面は急崖となっている。古代からの備後~出雲間の重要交通路であり,中世には恵蘇郡地毘荘多賀村に入封した山内氏もこの交通路に注目した。一説には,承久の乱後隠岐から流刑の後に後鳥羽上皇がこの道を通ったため王貫峠の名が生じたとしている。また峠南麓の和南原の杉神社では,神無月に山陽諸国の神々が出雲大社に参集する際に,出雲の諸神がこの神社で迎えることとしており,重要道であったことがうかがえる。江戸期には,南の新市駅から雲伯路(宮内経由)と出雲路(比和経由)が合し,当峠を越え,番所が設置されていた。現在,峠道の国道には高野町新市と仁多町内へバス路線が開設されている。冬季の3か月間は,雪が1.5m近くあり,峠付近での除雪はかなりの回数を必要とする。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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