上蒲刈島
【かみかまがりじま】

安芸灘に浮かぶ芸予諸島の１島。西は下蒲刈島。全島安芸郡蒲刈町に属す。面積19.01km(^2)。集落は東から西へ大浦，宮盛（役場所在地），田戸，向と島の北と西の斜面に発達している。仁方と結ぶ連絡航路は仁方～向間，仁方―田戸―宮盛―大浦―豊島―大崎下島があり，他に川尻～田戸間もあってカーフェリーが就航する。さらに仁方～今治間を結ぶ高速艇が田戸に寄航する。上記の集落を結ぶ呉市営バスが大浦を起点として運行され，小・中学生の通学や下蒲刈島連絡に利用されている。また，農免事業によって向～三之瀬間に蒲刈大橋が架設（昭和54年11月）され，50円の渡船は廃止された。架橋は農業構造改善もかねて柑橘の共同選果も可能にすることになった。脇本彰著の「蒲刈島郷土史」上巻にみる近世の産業は宝永７年大三島より甘藷の移入（向浦），天文６年伊予より移入した蒲刈ミカンの栽培（向浦），文政８年石灰製造と販売（向浦）などがある。地質は北西～南東の七国見山一帯へ向かって石灰岩を含む古生層がある。南岸の東半部初神(はじかみ)以東は，中生代白亜紀末に貫入したとみられる広島型花崗岩で，北側の東半部は全般に高田流紋岩類がある。両者の接触部でかつ島の東端大浦では山地部に花崗閃緑岩がある。初神の接触部付近ではザクロ石や透輝石などを産出する。東に大浦瀬戸があり，付近の属島には大子島・千才島・沖ノ島・笹島・荷(にの)島，大・小２島からなる宮盛浦の松島，向浦南の仏ケ崎の南沖合いの小島などがあり，いずれも無人である。島の北側では40～80mの水深があり，西は三之瀬瀬戸，北西は水深50m内外の女猫ノ瀬戸がある。すでに仁方沖のこの瀬戸一帯では商品化される魚類はあまりなく，上蒲刈島の南側の海面が重要な漁場になっている。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7188341