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上根峠
【かみねとうげ】


高田郡八千代町南部にある峠。北方の簸ノ川(ひのかわ)と南方の根谷川との陰陽分水界である。標高286m。国道54号が峠道となる。太古において中国山地の造山運動により,南部が断層により沈降したため,現在80mの比高をもつ断層崖が屹立する。南方根谷川は,かつて簸ノ川の支流であった入甲川を河川争奪し,地質学上重要地形として有名である。現在峠道の国道は,つづら折れの急坂となっている。峠北方の谷は内陸からの霧雲を遮断するため霧切(きりきり)谷と称し,気候の変化とともに民家の形態も異なっている。峠の上根集落に竜山神社があり,素盞嗚尊の大蛇退治の伝説地として御神体には草薙剣が祭祀されている。中世には峠の集落一帯を禰(ねの)村と称した。「陰徳太平記」および「吉田物語」に記す大永2年の尼子・毛利両氏の根之坂上合戦として有名である。毛利氏は吉田郡山(現高田郡吉田町)を本丸に峠付近を西の防御線としていた。慶長年間には,毛利氏の広島開城に伴い雲石路が開設され,人馬の通行も可能となり,上根には宿場が設置された。明治以降県はこの往還の整備を開始し,国道54号として広島市と松江市を結ぶ一大幹線となった。しかしこの急坂は,異常気象時の交通規制や冬季の路面凍結・積雪などの難所で,昭和47年から現路線東辺の山腹に上根バイパスの建設が開始された。計画では,昭和58年に片側2車線が,同65年には4車線の新道となる予定。上根集落からは西方の山県郡千代田町に至るバス路線がある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7188390