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古鷹山
【ふるたかやま】


広島湾南方,江田島にある山。安芸郡江田島町に属す。江田島北部は標高300mを超す古鷹山山塊を擁し,東方の岩峰の総称。地形図の示す標高376.3mは三角点の位置。土地の人は西に続く392mの岩峰を古鷹山とする。北西端のクマン岳と一連の屏風のような山稜をみせ,巨大な花崗岩塊が露出した岩場の多い荒々しい山容を呈する。深層風化が著しい丘陵性の山麓は江田島ミカンの産地。古老の説によると,その昔,難破寸前の舟の前に大鷹が現れて波静かな江田島湾に導いた後,この山中に姿を消したという。人々は鷹に感謝し,鷹宮大明神なる堂を山頂に建立して祀ったという。「芸藩通志」に見られる「八幡宮,鷹神社並に江田島本浦にあり」は,鷹宮大明神が,山堂から南麓の矢野浦にある八幡神社に移され,合祀されるに至ったことを示す。江田島湾に面する南麓は,旧海軍兵学校の資料館をもつ海上自衛隊第1術科学校の地。心身鍛練の場として馴染深い山である。かつて,山頂付近の巨岩の空洞に「天皇陛下昭和五年十月二十三日海軍兵学校に行幸被為在」と記されていたと聞く。91haに及ぶ山一帯は地域住民に親しまれてきた景観を残し,崩壊しやすい花崗岩山地の災害防止もあって,昭和5年,緑地環境保全地域の指定を受けた。昭和53年の山火事でほとんどを破壊された植生も緑化修景の努力により,着実に回復しつつある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7190777