100辞書・辞典一括検索

JLogos

17

北浦
【きたうら】


県内の日本海沿岸地方の地域名。北浦地方・北浦海岸地方とも呼ぶ。豊浦郡豊北(ほうほく)町の角島から向津具半島北岸を経て長門(ながと)市の青海島に至る海岸地方が中心だが,広狭さまざまに使われ,東は萩市まで含めていう場合もある。もともと下関方面からの呼び名に由来した地域名なので,豊浦山地西側の響灘沿岸を含む。花尾山地や天井ケ岳山地などの分水界山地の位置が,県西部では著しく北に偏っているため,日本海斜面にある北浦は地積が狭く,響灘沿岸も山地が海岸に迫り平地が少ない。沿岸平野は,萩・仙崎・大津・豊浦・下関に見られるのみである。沿岸は対馬海流の影響を受けて,気温は瀬戸内海側と大差はないが,冬季には大陸からの季節風をまともに受ける。北長門海岸国定公園や西長門海岸県立自然公園を中心に,すぐれた自然があり,萩城下町,湯本・川棚温泉などの文化・観光・保養資源も多い。産業は農林業に加え,小型動力船による沿岸漁業を主体とした水産業を主とする。九州や朝鮮半島に近いこの地方は,早くから水田耕作が進み,弥生時代の農耕集落遺跡が沿岸に分布する。近世には漁業集落も定着し,通浦(長門市)・川尻浦(大津郡油谷(ゆや)町)などを基地とする捕鯨業・ブリ延縄漁業・大敷網漁業などが栄えた。陸上交通では,萩~赤間関間の赤間関街道(北浦道筋)が通り,現在のJR山陰本線や国道191号は同街道に沿っている。季節風を避けやすい岬のかげに塊村状の漁業集落の立地する豊浦町。リアス海岸の湾頭に並ぶ小漁村と角島を持つ豊北町。漁業と農業を中心とした第1次産業が主体の油谷湾地域などが北浦の特徴的な地域景観をなす。北浦地方の首邑をなす長門市は,主産業が農林水産業で,観光とこれに関連する商工業からなる。なかでも水産業の占める比重は高く,日本海沿岸の代表的漁港仙崎を擁し,地元に水揚げされる漁獲物を原材料とする水産加工業はその基幹となっている。豪放な海岸風景をもつ青海島,湯本温泉など観光・保養の基地ともなっている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7192579