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玖珂扇状地
【くがせんじょうち】


県東部内陸に位置する玖珂盆地の北東部に発達した,面積約2km(^2)の典型的な円弧状扇状地。盆地の北側に広がる周防(すおう)山地の蓮華山(576.4m)を水源とする水無川は,チャートやスレートなどの古生層から成る中起伏山地を浸食し,その谷口に沖積扇状地を形成した。下刻が進む谷底平野は,玖珂郡玖珂町谷津下で扇頂下刻を見せる。勾配1,000分の16の扇央部では水無川の名が示すように,河川は扇端部の三角点(53.8m)付近まで豪雨時以外は涸れ川になり,土砂を堆積して天井川となる。円弧状の扇端は花弁状に4つの小円弧が張り出し,河道変遷に伴って次々に堆積して扇状地が形成されたことがわかる。東側の張出しは市頭付近で笹見川の谷底平野に面し標高55~60m,次は新市筋を中心とする標高50~55m付近,その西側が現在の水無川を中心とする標高50mの大円弧,そして千束に向かって標高50mで張り出す阿山地区の高まりがある。等高線50mは畑地と水田の地類線とほぼ一致し,豊富な湧水帯が並び,蓮田も散在する。埋積が進んだ久門給や瀬田の谷底平野には,島田川の常習氾濫地であった河畔部を除き,条里制遺構が分布する。扇央の水田化のため伏流水を集める地下ダムが小幡浦治郎によって立案され,大正12年谷津中に,同14年谷津上に構築された。扇央開田(6.7ha)の余水は玖珂町中心部の日用水や消防用水にも充てられた。大正期に養蚕業が大幅に発達し,昭和19年県養蚕試験所が開設されたが,玖珂町の養蚕業は昭和53年に消滅。県蚕業試験所跡地は町民グラウンドと勤労者体育センターとなり,畑地に宅地化も進み,次第に扇状地特有の景観が薄れている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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