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黒髪島
【くろかみじま】


新南陽市富田・徳山市大津島に属し,徳山湾内に浮かぶ島。面積3.53km(^2)。全島白亜紀の黒雲母花崗岩からなり,ほぼ円形に近い形をなし,地形も円頂性のなだらかな斜面が広がり,西側がやや急斜面で,最高点も西寄りの標高313.3m。徳山湾内の他の島々と同様に沈水島であるから,海岸にはほとんど平地がなく,岩浜ばかりだが,西岸の採石場付近は約900mにわたって護岸がほどこされた人工海岸となっている。また東の仙島との間は,約100m・幅25m程の大干渡と呼ぶ砂州でつながっている。植生は大部分がアカマツの2次林だが,山頂一帯には常緑広葉樹林も見られ,全島国有林。交通は大津島~徳山港間の定期船が寄港している。北岸の白石の海岸には縄文土器の破片がかなり分布しており,石斧や姫島産黒曜石の石鏃なども発見されている。江戸期には徳山領富田村に属し,黒神島と称した。慶長国絵図には仙島と続いて描かれ,樹林のよく茂った島となっている。「地下上申」では島の東端のヒトノハナと仙島の間は40間程の海峡となっているが,文化3年4月にここを測量した伊能忠敬の作成した伊能大図写(毛利文庫所蔵)では,当島と仙島はつながっている。明治10年代から花崗岩の採石が行われ,同43年にはソ連へも積出されている。当島の花崗岩は黒髪石・徳山石として広く知られ,きわめて堅緻で,長尺物が特産とされ,販路は全国的であったが,特に九州方面が多かった。大正10年から,国会議事堂の建設石材として3年にわたり3万tが東京へ運ばれた。昭和8年の生産量1万3,950才。同17年黒髪石材株式会社ができ,刈田石材との2社によって採石が続けられた。同27年大津島経由の海底ケーブルで電力が入り,それまでの爆破法から電気削岩法に代わって効率化が進み,生産が拡大された。皇居の昭和新宮殿や新幹線の新岩国から小倉までの各新駅の建設には黒髪石が多量に使われた(徳山市史下)。同55年の生産量は月産約2.5万t。島の周辺は好漁場で,メバルやチヌなどの釣り客が多く,大干渡付近の砂地ではアサリの養殖が行われ,大阪方面へも出荷される。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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