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白魚洞
【はくぎょどう】


通称を「すいこみあな」という。美祢(みね)郡美東(みとう)町赤の沼ポリエ南端に開口する横穴式の流入洞。洞口はコンクリートでアーチ状に固められ,上部の露頭以外に石灰洞の面影はない。幅約2mの水路には入口に砂防堰が造られているが,洞口にも堆積が進み,水流は伏流して流入する。沼ポリエは白魚洞が唯一の排水口。中原ポリエから絵堂の狭隘部を経て厚東(ことう)川上流の絵堂川に注ぐ山崎川とは,中原と碇を結ぶ谷中分水界で流域を分けるが,中原ポリエの地下水も白魚洞に集まっている。沼ポリエの碇や横野地区の灌漑用水は中原ポリエ西部から供給される。この付近一帯は梅雨期や台風時に連続降雨があると,周辺の石灰岩台地の地下水位がポリエの湛水面よりも高くなり,白魚洞など散在する石灰洞などから吐水現象が始まる。植山の水神が祀られている「このかわ」,生活用水に利用される竪穴「釣水の穴」,横穴「竜宮穴」などからの吐水は多く,白魚洞に流入する沼川が貧弱なことから,段丘が狭隘部を形成する小川(こがわ)より上流の植山地区と,白魚洞前面に大氾濫湖が出現する。昭和17年には18日間も冠水して稲作が減収し,交通も筏を利用したという。標高170~180mのポリエ周辺には比高約20mの赤郷面,比高5~10mの中原面と呼ばれる2段の段丘が分布する。集落は段丘面に立地し,小川と横野を結ぶ町道は,昭和48年に県道に昇格されてかさ上げされるまで,途中の沖積面で水没し,町営の白魚丸が通っていた。中原ポリエから氾濫湖への流入を防ぐため,灌漑用水路の途中を横切って山崎川へ排水する溝川を大きく改修し,溝川に沿う道路を堤防として灌漑用水路に水門を設置したため,現在では浸水期間が短くなった。白魚洞に入った水は広谷ポリエに排水され厚東川に至る。白魚洞の名称は,太陽光線があたらないため色あせたコイ・フナ・ウナギなどが洞内に生棲していることに由来し,これらの魚は景清(かげきよ)穴前の奥秋吉台郷土資料展示館内に展示されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7194092