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天ケ円
【あまがつぶ】


讃岐山脈の東端近く,鳴門市のほぼ中央にある山。標高434.3m。鳴門市大麻町大谷の集落の北方3kmに位置し,大谷の大谷川と大麻町板東の樋殿谷(ひどのだに)川の分水嶺を構成する。「阿波志」に,「その頂(いただき)円(まるく)して秀づ」とあり,山頂のすぐ北側には,どのような干天にも決してかれたことがないと伝える池がある。山頂の北北東900mの尾根上に猟師の墓と伝えられている暦応4年の銘の宝篋印塔がある。また南西600mには猿の墓と伝える文保2年の銘の塔があったと伝えられている(板野郡村誌)。この2つの墓には,弟の猟師が兄の仇の大猿を討ち取ったという伝説がある。また山頂の北東方500mに堂床(どうとこ)と呼ばれる平坦地があり,往時は堂宇が建っていたことを暗示している。大麻町池谷にある天河別神社も,往古は天ケ円にあったと伝えられており(粟の落穂/新編阿波叢書),このほか醍醐寺三宝院に属する修験道寺院教学院(永久寺)が南側山麓にあって,往古は上坊・下坊など8坊があったと伝えられる(堀江荘史)など,古くは信仰の聖地であったと考えられる。現在も国鉄鳴門線阿波大谷駅前に下坊が現存し,またこれとは別に山麓には御岳神社がある。昭和45年に山頂から堂床付近にかけて鳴門市営の大麻観光放牧場がつくられた。天ケ津峰という字が用いられることがあるが,これは,第2次大戦後国土地理院の地形図の誤用を踏襲したためである。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7195064