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祖谷川
【いやがわ】


剣(つるぎ)山から三好郡の東祖谷山(ひがしいややま)村・西祖谷山村を西流し,大歩危(おおぼけ)峡谷北端近くで吉野川に合流する川。吉野川右岸の代表的支流。延長53.8km,流域面積36.6km(^2)。周囲を1,000~2,000m級の山々が囲み,急速な下刻により渓岸は急斜し,上流菅生付近の段丘を除くと谷底平野はなく,すべて峡谷といってよい。下流の祖谷渓はその代表である。往時は河谷は交通路ではなく障害で,大正9年に祖谷川沿いの新道が完成するまでは,祖谷地方の表玄関は,東祖谷山北東の小島峠であった。狭い峡谷の対岸へはかずら橋をかけた。明治末期には祖谷川本流・松尾川・小川谷川を加えて計13橋あった。川は木材の流送に使われ,筏として徳島まで流された。また河床の急勾配を利用して,明治末~昭和36年の間に三縄(みなわ)・祖谷・出合・一宇・高野・名頃の各発電所が建設された。最上流の名頃を除くといずれも水路式であるので,松尾川発電所への分水により発生電力量は減少した。祖谷渓・かずら橋は,大歩危・剣山を合わせた広域観光圏の拠点であり,国道439号・祖谷渓有料道路・主要地方道山城東祖谷山線が連絡路となる。祖谷川流域は屋島の合戦で敗れた平家一門が安徳天皇を守って逃げ住んだという平家伝説のある所で,数多くの伝説が残っている。東祖谷山村の阿佐家は平国盛の子孫といわれ,南無八幡大菩薩と書かれた赤旗を保存している。同村の栗枝渡(くりしど)の八幡神社には安徳天皇を火葬した跡とされる所があり,注連縄が張られている。また,平家の公達が琵琶を弾いたという琵琶の滝もある。




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「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7195236