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雲辺寺山
【うんぺんじやま】


讃岐山脈西端に位置し,三好郡池田町と香川県大野原町の境界線上にある山。標高930m。山頂の南方400mに三角点920.8mがある。山頂に四国霊場八十八か所第66番札所の雲辺寺がある。寺の所在地は県境より東に寄り池田町白地であるが,札所の順序からは香川県の寺になる。「阿波奇事雑話」に「この寺,阿州に属すれど,古へはいかにありけむ,(弘法)大師の定め給ひし四国遍礼所には六十六番讃州の寺とす」とあり,江戸期から不思議がられた。「縁起」によると延暦8年に弘法大師が建立し,大師みずから千手観音・不動明王・毘沙門像を彫った。その後,阿波坊(持法院)・讃岐坊(玉蔵坊)・伊予坊(喜蔵坊)・土佐坊(年行寺)を建てたが,阿波坊のみが残るという。「阿波志」に,「門径(正門の道)讃岐に通ず」とある。寺宝の千手観音座像(木像・経尋作)・毘沙門天立像(木像)・聖衆来迎図(絹本着色)は藤原期の作品と鑑定され,明治期に国宝に指定されている。寺の山号を巨鼈山(きよべつさん)と称するのは山容が亀に似ているからという。麓の地名から白地山・佐野山などと異称される。ほぼ四国の中央にあり,讃岐平野が一望できるところから「全讃史」に「長宗我部元親,この山に登り,四州(四国)を俯見し,遂に掌握の心生ず」とある。「南海治乱記」にも,天正5年に元親はこの山に登り,寺僧に讃岐侵略の是非を聞いて止められた。その時,部下の谷忠兵衛(白地城主)が「仏道は僧侶に聞き,武道は武士に聞くべきもの」と忠告したというエピソードがある。山名の由来は,山高く,眺望するに雲のたなびく辺にあるからという。雲辺寺は四国霊場中,最も高地に位置する。近くに県青少年野外活動センター・マイクロウエーブ中継所などがある。地質は和泉層群よりなる。山頂付近の植物では,スギ・モミ・ツガ・カエデ・ミズキなどの大木が茂り,林床にはモミジガサ・サイゴクベニシダ・ヒヨドリバナ・シコクカッコウソウなどが見られる。登山道は池田町馬路・香川県大野原町からも古い参詣道があるが,現在は頂上まで車道が通じる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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