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腕山
【かいなやま】


三好郡西祖谷山(にしいややま)村の北東部にある山。辻町と松尾川の上流小祖谷を結ぶ水ノ口峠の南西約2kmの地点に位置する。標高1,332.9m。なだらかな,ススキを主とする草原状の山で,約4kmにわたって緩い斜面が広がる。大小の池もあり,牧草と水に恵まれているため,頂上から南西方面へ広がる草原約53haが,昭和34年に県営腕山放牧場として開かれた。牧草オーチャード・ケンタッキーを栽培し,最大収容数80頭。山頂の北西約1kmの稜線下に腕山スキー場がある。昭和51年に剣山スキー場が開設されてから交通の不便さもあって一時衰退していたが,最近車道もスキー場まで延長され,剣山スキー場と共存するようになった。地質は三波川帯の塩基性岩よりなり,頂上付近には小岩石が所々に露出している。腕山の名は新しいが,北麓の井内谷は江戸期以前から名馬の産地として名高い。「阿州奇事雑話」には,「井内谷の山中に牧場があり名馬を産する。一説に平家物語で名高い生月(いけづき)がこの地方の産で,名西郡第十村のある寺に飼われていた。近所の若者が吉野川を渡らせると,他の馬は渡れなかったがこの馬だけは渡った。のち,縁あって鎌倉の源頼朝の御召馬になったが,懇望されて佐々木高綱に譲った。宇治川合戦で先陣を果たして名を上げた」という説話を紹介し,「或る説に江州(滋賀県)生月村という所にて,此の馬を生ず,よって生月と名づくと言う,この説近かるべし」としているが,腕山付近が馬の産地であったことは確かである。水ノ口峠は小祖谷方面への主要な古道であり,平家伝説の多くの落人がこの腕山の横の峠を越えたという。腕山への登山道はスキー場まで車で入り,草つき道を約1時間で達する。水ノ口峠まで車で入って西へ尾根を進んでも約1時間。牧場まで車で入り,そこから頂上までも約1時間。頂上三角点は草原でわかりにくい。スキー場から上の車道は荒れはてており,トラック・ジープ以外は走りにくい。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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