100辞書・辞典一括検索

JLogos

12

御世山
【ごせやま】


後世山・御前山などとも書く。阿南市と海部郡日和佐(ひわさ)町の境にある山。那賀川の東にあり,阿南市の西部を屏風のように取り囲み,阿南市と那賀郡鷲敷(わじき)町・相生(あいおい)町,日和佐町と境界線をなす山稜上に位置する。矢筈山の東方約2.5kmの地点にある。標高538.8m。「阿波名勝案内」には,天正年間に長宗我部元親が阿波に侵入した折に,夫人が夫の跡を慕ってこの山麓までやってきた。その折,村人に元親が戦死したと欺かれ,持っていた財宝までも奪われた。悲しみのあまり泣き続けて失明した。その後,病を得て死亡し,遺言により土佐国の見えるこの山に祀ったという。その後世神社は山頂から約500mほど南東に下った所にある。神社の前に犬塚があり,夫人の愛犬を埋めたという。今も眼病平癒を願う神として信仰を集める。一説には元親の子盛親の夫人で,盛親が豊臣方に味方し,大坂で敗北して処刑された。夫人が京都に上る途中で,悲報を知り嘆きのために失明した。地形図には御世山となっているが,最も多いのは後世山で,「後世を祈る」意から名づけられた。「日本伝説叢書」阿波の巻には御前山と記している。頂上は草付きの山で,付近にはネジキ・アセビ・リョウブなどの喬木があり,草木ではシダ類・シュンラン・ハルリンドウなどが見られる。南東の中腹に星越鉱山があり,マンガンを採石していた。登山道は国道55号の旧道の星越峠のほか,北の新野町海老川,東の福井町下原,南の日和佐町などから通じる。星越峠から1時間30分かかる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7196044