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剣山地
【つるぎさんち】


四国山地の東部を形成する山地。京柱峠から盟主剣山を経て,中津峰山まで約60kmに及び,徳島県の中央部をほぼ東西に走る。吉野川とは約20km離れて平行して連なる。1,954.7mの剣山を最高峰とし,1,500mを超える山岳約20座を含む。三嶺・剣山・高城山・高根山・中津峰山と連続する主峰に加え,高ノ瀬から中東山・石立山へと延びる石立山系,ジロウギュウから権田山・平家平へと分岐する那賀山系,剣山から丸笹山へ分岐して塔ノ丸と赤帽子山との両側へ広がる山系,雲早山から高丸山へと延びる勝浦山系など4分脈を持つ。地質は大部分が秩父古生層からなるが,北部はミカブ帯がほぼ東西に走り,天狗塚・塔ノ丸・赤帽子山などがこれに属す。南部では那賀川沿いに仏像構造線が東西に走る。全体的には壮年期の険しい地勢をなすが,天狗塚から三嶺西側,剣山頂上,塔ノ丸,丸笹山から赤帽子山までなど高原状の山地で,ミカブ帯の岩質と関連がある。剣山の頂は一説には隆起準平原の遺物とされる。剣山地の南北では土地利用・産業構造・生活様式などに大きな地域差が見られる。その最大の要因は降雨量である。北斜面では年間2,000~2,500mmであるのに対し,南斜面では3,000mmを超え,電源地帯となっている。地勢では北斜面は比較的緩やかで,段階的に低下するため,最高標高1,200mまで耕作されている。北斜面の山村では畑地率が50~70%を占め,水田率は5%前後から15%までである。南斜面は急峻で,ほとんど平地がなく,加えて高温多湿で山林依存率が極めて高い。那賀郡木頭村を中心にスギ・ヒノキなどの人工林が50~80%を占め,山林の村外地主所有率が高いのが特徴である。北斜面での人工林は30~50%である。産物では北斜面の畑地で葉煙草・コンニャク,また,干柿・繭・ミツマタ・ソバ・シイタケなど,南斜面ではユズ・緑茶・アメゴなどが特産される。動物ではツキノワグマ・ニホンカモシカが生息する。植物ではケンザンデンダ・ツルギハナウド・ツルギカンギク・シコクシラベ・シコクカッコウソウ・シコクシモツケソウ・シコクテンナンショウ・シコクトリアシショウマ・シコクヤマトリカブトなど剣山の剣,四国の名称のついた稀産種もこの山地には多い。剣山をはじめ,大川原高原・中津峰山などは大衆的な登山・ハイキング・キャンプなど野外活動で親しまれ,高ノ瀬峡・槍戸峡谷・釜ケ谷峡谷・祖谷渓・剣峡などは渓谷美と紅葉の観光地として,また県民のレクリエーションの中心地として知られる。山域は12か町村にまたがる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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