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南方
【みなみがた】


県を大きく二分した慣用的な地域表現で,県の南東部那賀川・勝浦川・海部川流域をいう。現在の小松島市・阿南市・那賀郡・海部郡一帯を指す。「国造本紀」の「粟国」「長国」説では長国に比定される。「日本書紀」の巻第13の允恭天皇の条の海人男狭磯の話や「延喜式」による「那賀潜女」にみられるように海とのかかわりが深く,海部郡には海部(あまべ)族が占住していた。この太平洋に面した海岸部からの海産物と,阿南市の橘湾や椿湾を中心とした養殖漁業などの水産業が発達し,各河川の作る平野部は水田単作地帯で徳島の穀倉地帯をなしてきた。特産物としては阿南市新野・桑野・福井あたりのタケノコの栽培,阿南市加茂谷・大野,そして勝浦郡上勝町や勝浦町などの温州ミカン栽培,那賀奥の木頭・木沢両村を中心とした林業などである。気候は高温多雨であり,台風の被害も多いので,米作は早場米を多くしている。工業は阿南市の海岸部を中心に四国電力の火力発電所や神崎製紙などがあり,埋立地の阿南市辰巳地区には工場誘致が企画されており良港を基礎に南方の工業地帯となっている。政治の面では漁業の繁栄と広い耕地をもつ自作農,地主が多かったせいか,自由民権運動の際には立憲改進党を支持する地主が多く,北方に対して意識の面でも穏健でのんびりしているといわれる。観光資源は雄大な太平洋に臨む海部郡日和佐町の千羽海崖と南阿波サンライン,八坂八浜・水床湾など素晴らしい海岸美を有している。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7197425