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王頭山
【おうとざん】


「おうとやま」「おうとうざん」「ドンドロ山」(海図・備讃言語誌)ともいい,王頭山(地形図・地勢図等)・大頭山(新修丸亀市史)・大戸山(市資料など)・皇踏山とも書く。丸亀市の広島,南西部にある山。標高312m。塩飽(しわく)諸島中の最高峰。大戸山の表記は,明治期の地形調査から用いられはじめた。山名は,その高さ・山容・風格にちなむ説,神武天皇が東征の折,広島の青木に立ち寄り,山頂から播磨灘の方向の敵の様子をうかがったことにより,皇(王)登山と命名されたとする説などがある。島内の江の浦・釜の越・甲路・青木などの地区に裾野を広げ,特に南西の甲路,南東の釜の越側は急傾斜をなす。甲路側には南東から北西方向にかけて312m―250.6m-283.1mの稜線が約400m続き,高さ100m前後の地点には採石場が南北に連なる。釜の越集落側の斜面は植生が乏しく,岩盤の露出地や急崖をなす箇所があり,高さ100m前後の斜面は採石場となっている所が多い。以前は青木や甲路からの登山路もあったが,現在は藪に覆われ登山は極めて困難。唯一の登山路が江の浦側から通じるが,迷いやすい道である。登山道の入口付近は畑地で,道は竹林地帯に入る。その先の森林帯は喬木も見られるが,やがて石と花崗土の悪路となり,傾斜も急になる。その辺りから松の低木が卓越し,これより上方で喬木を見ることはほとんどない。風化花崗土が風雨で浸食されたため,砂礫質の箇所が多く,植生およびその生長には不利であるが,見通しはよい。登山路はその後岩場を通り,頂上近くでシダの群落中に埋没し,ツツジの植生が顕著となる。さらに8合目付近からモッコクも目につく。植生はほかにシダ・ウバメガシ・サカキ等がある。9合目付近,山道を少しそれた所に山神を祀る堂宇があるが,堂自体は著しく損傷している。山道は,山頂の一角の標高305.5mの地点まで通じているが,最高点はその地点から尾根伝いに170m疎林帯を行く必要がある。頂上からは四国・中国の山々までが眺望でき,見晴らしは瀬戸内海随一ともいわれる。山道の頂点付近では,江の浦に溜池が完成するまで雨乞の儀式を行った窪地がある。第2次大戦前まで江の浦の人々は,夏の日焼(日照り)の時にこの山に登り,まきをたき,雨乞踊りをした。また,この地点の北西方向の斜面は一木一草もない王頭砂漠が広がる。風化花崗岩の砂原で,砂泥と2~3mの巨石が連なる。伝説によれば,当地には身長1丈にも及ぶ怪僧が住みついていたといい,怪僧にちなむ坊主屋敷の地名がある。登山道は元日の市の体協主催の初日の出を見る会の開催時以外に利用する人は少ない。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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