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高松平野
【たかまつへいや】


高松市と木田郡の牟礼(むれ)・三木両町,香川郡の香川・香南両町に広がる平野。面積181.63km(^2)。低地(141.31km(^2))・下位台地(40.32km(^2))からなる。北は備讃瀬戸・屋島湾・志度湾に面し,東は雲附山地と大川平野,南は植田・川東・枌所などの上位台地と上佐・日山の両山地,西は五色台山地・堂山山地と綾歌平野の綾南下位台地に接する。当平野の名称は,大部分が高松市に広がることに由来。低地の地形には扇状地(113.33km(^2)),三角州・埋立地(26.03km(^2)),自然堤防・砂州(1.95km(^2))などがある。当平野を流域とする主な河川は,高松市南部の阿讃山地(讃岐山脈)から流出し,東部を流れて屋島西方に河口がある春日川,高松市東山崎町付近に付け替え改修で独立の川となった跡を残し,春日川と河口を共有する新川,香川・香南両町の境を通り,江戸初期に河道の付け替え工事で紫雲山西麓に流路を固定された香東川,高松市街東部を流れる詰田川,香南町南部の上位台地から流出し香東川の西方に河口がある本津川など。平野南部の低地は扇状地の性格をもつが,三木町の氷上・上高岡付近の低地は新川支流の桜谷川・古川・熊川・吉田川などの複合扇状地で,花崗岩・安山岩の中粒・小粒の礫を含む砂礫層で覆われる。植田上位台地や川島・三谷・仏生山などの下位台地に河谷低地を掘り込む春日川は,台地北方に小規模な複合扇状地を展開するが,花崗岩質の砂層の下に花崗岩・安山岩の小礫を含む砂と粘土の互層がある。香川町岩崎付近から北方に展開する香東川扇状地は,平野西部から中部にかけて広い面積を占め,標高は扇頂付近で約110m,標高10m付近に約2mの比高をもつ急斜面があり,扇状地末端泉を利用した野田池・河原池・新池などの溜池が並ぶ。河道に沿う沖積段丘崖の比高は扇頂部の西岸で約10m,東岸で約6m,崖の下部には埋木や植物化石を含む鮮新世の泥岩,上部には粗粒の扇状地礫層が露出するが,崖高は北方ほど低くなり,堤防の下に隠れ,紫雲山付近では天井川に移行する。扇面の砂礫層は香東川系が和泉層群起原の粗礫,春日川系が花崗岩・安山岩の小礫を含む砂を主とし,両者の境は上佐山・由良山・詰田川を結ぶ曲線上となる。香東川西岸から本津川沿岸の低地は平滑に連続するが,地表下4~5mまでは新しい礫層でその下に固結した鮮新世―洪積世の砂礫層または粘土層がある。平野北部の低地は香東川・春日川などの古扇状地が沖積世初頭の海進で浅海に沈み,その後の海退で陸化した海岸平野を河川と海浜の堆積物が被覆して新しい沖積低地を発達させている。これは海退のほかに阿讃山地の急上昇で河川が山地を下刻し続けて多量の砂礫を生産し,下流に運搬堆積した結果でもある。新川中流沿岸の三木町池戸付近から北方の高松市東部一帯は三角州性の低湿地で,花崗岩質の砂・粘土が地表下に続く。標高10m以北は条里の遺構がなく,新田地割をもつ新しい複合三角州で海岸に埋立地・旧塩田が並び,海岸から2km以上離れた所で高松市の高松町に堀江,木太町に高須(州),松島町に州端(すべり)などの地名が残る。寿永4年の源平合戦の頃は屋島は離島で,源軍は「潮の干て候時は陸と島の間は馬の太腹も漬らず候」という浅瀬を徒渉して赤牛(あかば)崎付近に敵前上陸して,平家の陣屋を攻撃した。生駒親正は天正16年に香東川の東の河口にあった砂州の上に高松城を建てたが,寛永14年には西島八兵衛が東浜・松島から新川までの間に福岡・木太・春日などの新田を開き,高松藩治下の貞享5年頃に福岡町に古浜,宝暦5年屋島南西に亥ノ浜,同6年に子ノ浜,天保4年新浜,同6年柏納屋浜,同13年潟元新浜,慶応2年福岡新浜,明治期には明治3年久通塩田,同10年宮脇浜,同23年檀ノ浦新浜,同25年高松浜,同30年立石浜,同31年香西浜,同39年西潟元半学塩田,同43年木太塩田,屋島浜などの塩田が造成されたが,現在塩田はすべて廃止されている。埋立地では藩政時代に西浜・東浜・堀川などの港が造られ,明治以後も埋立地造成が進んだが,最近では昭和37年に香西地区5ha,同41年に弦打地区16ha,同42年に西浜地区31ha,同43年に同12ha,同27年から同49年までに朝日地区約150haなどの埋立地が造成された。関東平野の武蔵野台地などに相当する下位台地で,新川中流沿岸の岳山北麓にある三木台地は三木町丸岡付近で南北0.8kmの幅があり,厚さ約3mの花崗岩質の砂に最大径20cmの風化した安山岩質の礫を含む砂礫層に覆われ,その下に小角礫を含む花崗岩質砂層や粘土層がある。春日川沿岸の川島台地は安山岩・砂岩の円礫を含み層理が発達した砂層で覆われ,南部では花崗岩の小丘が残丘状に残り,その周辺には同岩起原の最大径20cmで風化した礫層が露出する。上佐山東麓の三谷台地では砂岩70%,安山岩24%,花崗岩6%の最大径30cmの礫層に覆われるが,北方ほど粒径が小さく,砂が多くなり,台地面は急に低下して沖積地の下へ潜入している。香東川東岸の仏生山台地は南方へ向かって階段状に高度を増し,台地を構成する砂礫層は北部ほど安山岩質が多く,南部ほど砂岩質・花崗岩質の礫が多いが,最大径は北部で約15cm,南部で約30cmとなり風化が著しい。香東川西岸の香南台地は最大径20cmの砂岩礫が多く花崗岩礫を含み風化した砂礫層で構成され,台地東端は比高10~15mの急斜面で低地に接し,西部は本津川が比高15~20m,幅0.3kmの河谷を掘り込む。これらの台地北部には崖端浸食谷が発達し,三木町に蓮池,高松市に三郎池・住蓮寺池・小田池・奈良須池などの溜池が造られている。当平野周辺には多くの遺跡・古墳があるが,前方後円墳は高松市屋島西町の長崎・浜北1号,東山崎町の茶臼山,池田町の光専寺山,西植田町の尾越1号,三谷町の瘤山・石船,宮脇町の稲荷山姫塚,室町の稲荷山1号,峰山町の姫塚・北大塚西・小塚,勅使町のがべ塚,鶴市町の北大塚,鬼無町の今岡・かしが谷・相越・衣掛・御厩天神社などの古墳がある。条里制では,高松市前田東町の芳岡山(103m)が旧山田郡の1条の起点で,香川郡との境の8条まであったという。東西の基準は三木町の白山(203m)と高松市と国分寺町の境にある六ツ目山(317m)で,その中間に南海道に沿う讃岐一宮の田村神社があった。旧香川郡の1条は,高松市の多肥下町・多肥上町東端に始まり,西は旧阿野(あや)郡との境の12条まであった。条里遺構は地形図や航空写真でも明瞭だが,紫雲山南方の御坊川沿岸では遺構が幅約1.5kmにわたり氾濫原の下に埋没し,この部分の道路網が乱され,春日川・新川の下流の氾濫原にも乱れた道路網が分布するが,屋島や紫雲山の山頂から眺めると,平野の大部分には整然とした道路網・水路網が条里の遺構を顕著に示す。条里関係の地名では高松市に三条町・六条町,同市の小村町に一坪,由良町に一ノ坪,亀田町に三反地・五反地,前田東町に五反地,上田井町と下田井町に三十六(みそろく),一宮町に六反地・八反地,円座町に東八反地・西八反地,檀紙町と川部町に八反地などが残る。農業水利では牟礼低地が羽間下池など267個の溜池群により,高松低地東部が春日川沿岸の神内池・松尾池・城池・公淵池からなる四箇池,新川支流の吉田川にある小川下池,同鍛冶川にある山大寺池,雲附山麓にある男井間池と久米池などの水を春日川・新川から取水し,同西部が塩江(しおのえ)町にある内場池の水を香東川の芦脇堰(148.5ha)・一ノ井堰(117.5ha)・新井堰(1,900.8ha)などから取水して香川町の新池・竜満池,高松市の小田池・奈良須池・平池・三郎池・友常池(10万5,140m(^3),320ha)・御厩池(43万8,900m(^3),114ha)などに入れて灌漑する。当平野は本県農業の中心地で,イネ・ハダカムギ・タバコ・カボチャ・ダイコン・イチゴ・ナス・ネギ・ホウレンソウ・サトイモなどの作付けが多く,周辺の斜傾地ではミカン・夏ミカン・ビワ・ネーブルオレンジ・イチジク・リンゴ・茶などを作る。海岸のノリ養殖も県内一で,ハマチ・マダイ・クロダイ・スズキ・トラフグ・カキなども養殖する。製造業では高松市街を中心に家具・漆器・ちり紙・はかり・造船・鉄鋼・農機・エンジン・天井板・テックスなどの工場がある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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