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丸亀平野
【まるがめへいや】


県西部にある丸亀市・善通寺市と仲多度郡の多度津・琴平・満濃・仲南(ちゆうなん)各町に広がる平野。面積126.77km(^2)。低地(103.72km(^2))・下位台地(23.05km(^2))からなる。当平野の呼称は平野内最大の都市丸亀市に由来。北部の低地では土器川の古扇状地が沖積世初頭の海進で浅海に沈み,その後の海退で海面上に現れた海岸平野の上に新しい扇状地三角州が発達途上にあり,善通寺市街・如意山付近以南では礫土が卓越し,その北方では礫を含まない地域の間に礫土地域が3方向に北へ突出する。地盤の増傾斜運動で中津山以北の土器川河道は扇面上を西から東へ移動し,現在では飯野山西麓を北流。西部を流れる金倉川は流路と地表の傾斜が一致せず,人工河川と思われる。金倉川河口では三角州が成長し,海岸に沿う浜堤内側の後背湿地は一毛作田で,大雨の際には浸水する。丸亀市の塩屋・本町通・平山通なども浜堤上の街村から発達したが,その南方の後背湿地も湛水しやすく,湿地南側の5m等高線上には今津・津ノ森・高津など,集落が発生した当時は海岸であったことを示す地名が並ぶ。丸亀では元和元年播州赤穂から来住した26人の移住者が海浜に東西7町50間,南北6町の塩田を開き,慶応年間に着工し明治4年に完成した野口浜は5町4反,大正11年に着工し同14年に完工した蓬莱塩田は94町9反余の塩田で,現在では昭和39年以降造成された265万4,586m(^2)の埋立地とともに丸亀市の終末処理場・清掃センター,造船・電機・合板・鉄工などの工場用地と緑地帯などに変化した。多度津町の弘田川下流沿岸は低湿な三角州で,河口付近の西白方・海岸寺・浜などに浜堤が発達。堀江の港は奈良期に造られ,元禄7年の埋立地には多度津測候所・国鉄工場・県立水産高校などがあり,昭和49年に完成した189万9,711m(^2)の埋立地には原子力工学試験センターのほか,造船・電機・石油・鋼材・建材などの工場が立地。関東平野の武蔵野台地に相当する下位台地には,土器川西岸の河岸段丘に満濃町の高屋原台地があり,比高は約30mで最大径80cmの砂岩・花崗岩・安山岩起原の礫層で覆われ,基部には径5cm以下の小円礫を含む固結した花崗岩質砂礫層の上に青粘土のレンズの薄層を含む花崗岩質砂層が厚さ数mで露出する。仲南町の久保から小池・福良見に続く谷底も下位台地に相当し,この谷を流れていた川は財田川の河川争奪を受けたが,久保には財田川に面して比高15mの段丘崖がある。善通寺市の吉原台地は我拝師山北麓の小開析扇状地で,安山岩・花崗岩の亜角礫で覆われるが,同市の三井ノ江や多度津町の見立・奥白方などにも同様な台地が小範囲に分布する。当平野付近には古墳が多いが,前方後円墳では多度津町に御産盥山・経尾山・東北浦・黒藤山4号,丸亀市に吉岡神社,善通寺市に北原・菊塚・王墓・北向八幡神社・鶴ケ峰・遠藤塚・経塚・椀貸塚・野田,満濃町に天神七ツ塚5号などの古墳がある。条里制関係の地名では丸亀市の郡家町に八反地・七ノ坪,三条町に上三条・一ノ坪・六ノ坪,川西町に七条・八条・八丈池,垂水町に中代・上代,善通寺市の原田町に四条,金蔵寺町に五条・六条,仲多度郡の満濃町に四条・五条・五段地,琴平町に六条,多度津町に一ノ坪・四ノ坪・五ノ坪・八ノ坪などがあり,旧鵜足(うた)郡の6~8条,旧那珂郡の1~6条,旧多度郡の1~6条が東から西へ並列し,旧那珂郡の1条の基線は郡家・垂水両町と川西町との境に相当し丸亀城のある亀山を通るN30°Wの線と思われる。条里遺構は,現在の道路網・水路網にも深く関係するが,低地の大部分は満濃池の受益地域で,この池は,阿讃山地の山麓台の性質をもつ上位台地の浸食谷に,大宝年間讃岐国守道守朝臣が築造したもので,弘法大師(空海)・西島八兵衛などにより修築・改造を繰り返した。現在の有効貯水量は1,540万m(^3)で,集水面積は金倉川上流沿岸1,200ha,財田川上流沿岸1,230ha,土器川上流沿岸6,700haなど計9,890ha。各市町の受益面積は,丸亀市1,496ha,善通寺市1,267.5ha,満濃町774.3ha,仲南町0.1ha,琴平町347.5ha,多度津町717.1ha。配水系統は池の下で西へ買田幹線,池尻で吉野水路,満濃町八幡で丸亀幹線,丸亀幹線から宝幢寺・蓮池・金蔵寺などの幹線,金倉川から高松琴平電鉄琴平駅北方で左岸幹線,如意山西方の西村横井で竜川幹線,左岸幹線の王子分水で豊原幹線などの水路が分岐。水利系統の整理の結果,多くの小池が整理されたが,各市町の主要な池は丸亀市の先代池・宝幢寺下池・道池,善通寺市の買田池・大池,満濃町の亀越池・羽間池など。扇状地末端泉の性質をもつ半人工湧泉の出水には善通寺市に双頭(ふたがしら)・上引(かんびき)・寺湧・上湧・八幡・上原などがあり,揚水量の多い農業用深井は丸亀市で川西町の八丈池・道池,多度津町の道福寺などにある。農産物は平坦地にイネ・ハダカムギ・タマネギ,傾斜地にミカンなどを作るが,北部ではレタス・レンコン・ホウレンソウ・カブ・ブドウ,南部ではタバコ・ダイコン・キュウリ・サトイモ・ジャガイモ・カキ・茶なども作り,豚・肉牛などを飼育。製造業では丸亀港付近に船舶・橋梁・鉄骨・鉄塔・閉鎖盤・工業用ゴムホース・包装用フィルム・合板・薬品・綿糸・綿織物・団扇,善通寺市にプラスチック製品・紙パルプ加工品・家具・畜産食料品,多度津港付近に変圧器・安定器・橋梁・船舶などの工場があり国鉄工場もある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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