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岩松川
【いわまつがわ】


北宇和郡津島町を東西に貫流する川。津島町大字御内(みうち)池ノ駄場付近に源を発し,西流して北灘湾に注ぐ。延長15.5km。源流地帯は宿毛湾に注ぐ松田川との河川の争奪現象の跡がみられる。影平(かげひら)の段丘面は岩松川の流路に対して逆傾斜し,松田川の河床の延長上にある。中流の横吹渓谷は,かつての岩松川と松田川との分水嶺が,岩松川の頭部浸食によって切断された横谷で,特に険しいV字谷をなす。その下手には馬ノ淵温泉があり,ここから先の岩松川は谷底平野の中を流れる。このうち馬ノ淵~清重(きよしげ)間には河岸段丘が断続するが,清重から下流では低湿な埋積谷の中を流れ,かつては流路の蛇行現象が著しかった。江戸期にはこのような蛇行部分が改修され直線化されるとともに,流域内の新田開発がなされた。その主な区域をあげれば,山財出合(さんざいであい)と岩淵間は寛永13年宇和島藩士にして颪部(おろしべ)村地頭三浦修理が改修し,颪部の新田集落を開いた。岩淵と拝高(はいたか)間の流路改修は時代不詳であるが,この間に下芋地谷(しもいもちや)の新田集落がある。慶応年間岩松の豪商小西家が宇津尻に堤防を築き改修した(岩松村誌)。この部分には古川の地名もあり,地形からしても旧流路が追跡できる。なお宇津尻は県天然記念物大ウナギの生息地でもある。河口の岩松は獅子文六の小説「てんやわんや」の舞台となった湾頭の街村である。河口を利用した港町として,藩政時代以降津島郷の物資の集散地として栄えたが,大正以降は,河口の土砂の堆積が著しく,港としての機能を消失した。岩松川が北灘湾に注ぐ所は干潟の発達が著しく,そこに昭和36年代行干拓の岩松干拓地が造成された。なお河口付近の干潟利用としては,海苔養殖が盛んで,アサリの有料採貝地区にもなっている。岩松川は宇和海に注ぐ県内河川中最も水量が豊富であり,その水を活用するために支流の山財(さんざい)川には山財ダムが建設されている。昭和42年の旱魃時には30kmも離れた吉田町大字立間(たちま)から給水車がミカンの灌漑水を買いに来たこともある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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