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面河渓
【おもごけい】


上浮穴(かみうけな)郡面河村の関門(かんもん)より上手9.6kmの面河川流域の渓谷。渓谷は四国の最高峰石鎚山の南斜面に源を発する。四周は1,500m以上の壮年期の険しい山地に囲まれ,川は滝と淵・早瀬の連続するV字谷となって流下する。石鎚山の裏側にあたるこの渓谷は,道路の未整備な明治期には世人にほとんど知られていなかったが,明治40年頃渋草小学校の教師石丸富太郎によって,「海南新聞」に紹介された。大正期以降探勝に訪れる者も増加,昭和8年に国指定の名勝となる。その時の審査官脇水鉄五郎博士は関西一の渓谷美と折り紙を付けた。昭和30年には石鎚国定公園に指定された。地質は三波川変成岩の基盤岩の上を花崗岩・安山岩などが覆う。渓谷沿いは国有林で天然林が保存されている。標高1,000m以下にはツガ・ウラジロガシなどの暖帯林が,その上にはブナ・ウラジロモミなどの温帯林が,標高1,600mから上ではシコクシラベなど亜寒帯林が見られる。渓谷沿いの主な景勝地には,下流から関門・想思渓・五色河原・亀腹・蓬莱峡・紅葉河原・下熊淵(しもくまのふち)・虎ガ淵・御来光(ごらいこう)滝などがある。関門は渓谷入口の景勝地で,両輝石安山岩の板状節理が面河川に浸食されて形成された峡谷。両岸は70mの絶壁をなし,屏風岩という。標高は650m。想思渓は関門から200m上流,黒色の安山岩が白色の花崗岩に漸移する地点で,支流の鉄砲石川が合流する。五色河原は関門から820m上流,河床は白色の花崗岩で緩傾斜する。岩石の白,水の藍,苔類の黒,樹木の緑など色彩豊かな渓谷でこの名がある。付近に国民宿舎の面河がある。亀腹は五色河原の上手,亀の腹の形をした高さ100m・幅200mの花崗岩の大断崖である。標高は約680m。対岸には伊予鉄経営の渓泉亭があり,渓谷の中心的景勝地。蓬莱峡は白色の花崗斑岩の板状節理がよく発達し階段そっくりの形。カエデ・ヒノキ・ツガなどの森林との調和がすばらしい。紅葉河原は幅広い花崗岩の河床の上を礫・岩塊が覆い,両岸にはカエデ類が多く,紅葉の美しさは渓谷第一。下熊淵は関門から2kmの上流,川幅が狭くなり両岸の樹木が相接する。灰黒色の硬岩が浸食に抗して瀑布をつくり,深さ10mの渓谷随一の深淵を形成する。虎ガ淵は下熊淵の400m上流,白色の花崗岩が多いが,灰黒色の硬岩が瀑布をつくり,その下手に深さ6mの滝壺をつくる。イヌブナ・ヒメシャラ・コウヤマキなどの針広混交樹林に包まれた幽邃な渓谷。御来光滝は関門から8km上流,安山岩の柱状節理にかかる滝。紅葉巌(もみじいわ)は面河川支流鉄砲石川にある岩。岩石の結晶が放射状に凝集し,あたかも紅葉のように見えるのでこの名がある。1個の紅葉模様は2~4cm。




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「角川日本地名大辞典」
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