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蒼社川
【そうじゃがわ】


古くは総社川と書いた。今治(いまばり)市の中央を貫流する川。越智(おち)郡玉川町の白潰(しらつえ)(1,158m)の北麓に源を発し,木地川・大野川・谷山川・御物川・泉川など10以上の支流を合わせて燧(ひうち)灘に注ぐ。流長19.4km,流域は102.8km(^2),市内での川幅は80~120mで堤防上には樹齢数百年の松が植樹されている。今治平野は蒼社川による堆積平野である。上流の高縄山地は降水量が多く,崩壊しやすい花崗岩の風化土のため,台風等の出水時には堤防が決壊して多量の土砂を流失,大きな災害をもたらした。寛文13年以降現在まで15回の洪水の記録があるが,享保7年,同14年,元文4年等は特に大きい被害を出し,明治26年10月の暴風雨では14か所で堤防が切れ,田畑の流失1,000町歩,家屋全壊および流失127戸,溺死6名,行方不明4名の被害を出している。享保ころから領内の15~60歳の男子を動員して川浚いを実施する「宗門堀」を毎年行い,宝暦元年から13年を要して河道の大改修をし,明治期には上流一帯に大規模な植林を行ったが,決定的対策とはならなかった。蒼社川の年間流出量は1億5,000tと推定され,20余の取水堰を通じて耕地1,500町歩に灌漑されていた。またその一部は高橋付近から伏流水となって市民の飲料水となるほか,タオル工業や染色工業発展の大きな要素となっていた。これらを総合した蒼社川の総合開発により,昭和46年に貯水量910万tの玉川ダムが完成し,工業および上水道農業用水も確保され,13水利組合2,200戸の一体化した蒼社川土地改良区が誕生し,近世から現代まで続いた水論に終止符を打った。蒼社川の上流は鈍川(にぶかわ)渓谷,蒼社峡,五丈の滝など自然美に恵まれて県立自然公園となっており,鈍川温泉から河口付近の今治新港等,市民の生命の川ということができる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7201929